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平成22年(ワ)第2488号 不当利得金返還請求事件
原 告  村田 達也
被 告  アイフル株式会社 外1名

                    移送申立に対する主張書面

                                                    平成22年12月  日

大阪地方裁判所堺支部第1民事部7B係 御中

                                  原告訴訟代理人弁護士 佐 野 隆 久

被告アイフル株式会社の移送申立書に対して,原告は,次のとおり主張する。

第1 「申立ての趣旨」(本件を羽曳野簡易裁判所へ移送するとの裁判を求める。)について
      本件申立を却下する。
    との裁判を求める。

第2 「申立ての理由」について
  1 「1」について
    (1) 被告アイフルの主張
        本件訴訟は,原告が複数の被告に対して不当利得返還請求をする事案であり,民事訴訟法38条後段の共同訴訟に該当する。
    (2) 原告の認否
        認める。
  2 「2」について
    (1) 第1段落について
      ア 被告アイフルの主張
          民事訴訟法7条では,「一の訴えで数個の請求をする場合には」「一の請求について管轄を有する裁判所にその訴えを提起することができる。」と定めているが,同条ただし書きにおいて,本訴訟のような「数人からの又は数人に対する訴えについては,第38条前段に定める場合に限る。」としており,同法38条後段に定める場合については,被告の防御の利益を考慮して除外されている。
      イ 原告の認否
          民訴法7条の存在については,認める。しかし,被告アイフルの解釈については争う。民訴法7条については,後述する。
    (2) 第2段落について
      ア 被告アイフルの主張(原文のママ)
          上記の法の趣旨に鑑みれば,同法9条の適用についても,同法38条後段の場合には訴訟の目的の価額を合算しないのが相当である。そうすると,本件の原告の被告アイフル株式会社に対する請求の事物管轄は簡易裁判所にあることは明らかである。
      イ 原告の認否及び反論
          否認及び争う。
          被告アイフルの主張は,同法38条後段の場合には,併合請求における管轄の適用がないとする同法7条但書きを根拠にして,同法9条の適用がないとするものである。しかしながら,同法9条は,「一の訴えで数個の請求をする場合には,その価額を合算したものを訴訟の目的の価額とする。」とあり,併合請求の場合の価額の算定について定めるものに過ぎない。また,同法9条には,同法7条但書きに相当する条文はなく,「一の訴えで数個の請求をする場合には,その価額を合算したものを訴訟の目的の価額とする。」のは,主に,訴額を算定し,これに相当する印紙税額を定める技術的なものに過ぎず,被告アイフルの防御の利益とは関係がない。
          従って,同法9条は,被告アイフル株式会社に対する請求の事物管轄を決定する根拠とはならない。
  3 「3」について
    (1) 被告アイフルの主張
        実質的にみても,同法54条によれば,地方裁判所においては,弁護士でなければ訴訟代理人となることはできないが,簡易裁判所においては,その許可を得て,弁護士でない者を訴訟代理人とすることができるのであって,本件のような訴額の事件を弁護士に委任する事なく訴訟追行できることは被告にとって防御上の利益となりえるところである。
    (2) 原告の認否及び反論
        被告アイフルは,平成21年7月頃から,地方裁判所における事件について,被告アイフルの従業員を支配人登記させ,この者を訴訟代理人として,訴訟を担当させている(商法21条1項)。支配人登記した者が実際に支配人としての実体があるかどうかは別としても,被告アイフルは,弁護士に委任することなく,被告アイフルの従業員を訴訟代理人としている以上,被告アイフルの主張は,理由がない。
  4 「4」について
      被告アイフルが掲げる決定は,全て最高裁判所のホームページの判例検索に掲載されておらず,前例としての意味を持たない。
      よって,被告アイフルの主張は,理由がない。

第3 原告の主張
  1 訴訟物と訴額について
    (1) 共同訴訟の要件の充足について
        本件訴額は,金230万2415円である。本件は,相手方(原告)が申立人(被告アイフル)を含めた貸金業者2名を共同被告として各不当利得に基づく過払金返還を求めたものである。各訴訟物の価額を合算すると金230万2415円(このうち申立人に係る部分は金115万3330円)となる。本件は,民訴法38条後段の共同訴訟の要件(訴訟の目的である権利又は義務が同種であって事実上及び法律上同種の原因に基づくとき)を充たすものである。
    (2) 訴額について
        一の訴えで数個の請求をする場合には,その価額を合算したものが訴訟のの目的の価額となる(同法9条1項本文)。
    (3) 事物管轄について
        従って,本件は,地方裁判所が第一審の裁判権を有することになる(裁判所法24条1項,33条1項1号)。
    (4) 民訴法7条但書きについて
        申立人は,民訴法7条但書きを指摘するが,同条は,土地管轄に関する規定である。従って,申立人の主張には理由がない。
    (5) 土地管轄について
        本件では,義務履行地を管轄する大阪地方裁判所堺支部に訴訟の管轄がある(同法5条1号)。従って,民事訴訟法第16条に基づく移送の要件を欠く。
    (6) 小括
        よって,申立人(被告アイフル)からなされた移送の申立ては,却下されるべきである。
  2 訴訟代理人について(被告アイフルに不利益がないこと)
    (1) 被告アイフル株式会社は,地方裁判所における訴訟追行にあたっては,代理人に弁護士をつけなければならないことを前提としている。
    (2) 確かに,被告アイフル株式会社(申立人)が自然人のような場合には,許可代理の規定を受ける利益を剥奪されることの被害が大きいといえる。
    (3) しかし,これは,不利益なものとはいえない。すなわち,代表者代表取締役または支配人が訴訟を担当すれば足りる。現実に,被告アイフル株式会社は,代表者が移送申立書を記述しており,他の地方裁判所における事件においては,支配人が被告アイフル株式会社を代理して訴訟を追行している。
    (4) また,被告アイフル株式会社の本店所在地が京都市にあることから,代表者又は支配人が大阪地方裁判所堺支部で訴訟を追行することは,羽曳野簡易裁判所で訴訟を追行することと比べて,交通に要する時間も少なく,被告にとって利便性に富む。
    (5) 従って,地方裁判所における弁護士に代理人を委任する必要性による被告アイフル株式会社の不利益については,理由がない。
  3 訴訟物の共通性(補充)
    (1) 原告と被告らとの間の訴訟物は,全て不当利得返還請求と同一であり,また,その基礎となる事実関係は,全て継続的な金銭消費貸借取引の下に生じた利息の払い過ぎにより生じた過払い金の返還請求である。従って,争点及び論点は,全て共通する。
    (2) そして,消費者金融業者側の経済的状況の悪化の下では,訴訟中の和解の可能性が低く,判決を得なければならない蓋然性がある。
    (3) また,前述のとおり,訴訟物が同一であり,その基礎,争点及び論点が同一であることから,弁論を分離することなく,御庁において,進行を統一することにより,訴訟の進行が区々とならず,統一的な解決を期待しうる。
    (4) よって,被告アイフル株式会社の主張には,理由がない。
  4 近時の最高裁判所の決定について
    (1) 近時の最高裁判所の決定に,次のものがある。平成20年(許)第21号最高裁判所第二小法廷平成20年7月18日決定の裁判要旨は,「地方裁判所にその管轄区域内の簡易裁判所の管轄に属する訴訟が提起され,被告から同簡易裁判所への移送の申立てがあった場合において,同申立てを却下する旨の判断は,民訴法16条2項の規定の趣旨にかんがみ,広く当該事件の事案の内容に照らして地方裁判所における審理及び裁判が相当であるかどうかという観点からされるべきであり,地方裁判所の合理的な裁量にゆだねられる。このことは,簡易裁判所の管轄が専属的管轄の合意によって生じた場合であっても異ならない。」とされている。
    (2) この決定要旨から本件について検討する。
        本件は,不当利得返還請求(過払金返還請求)を訴訟物とする。この訴訟物の特徴は,事実としての取引履歴については,殆どの場合争いがなく,争いとなるのは,多くの場合,法律解釈と適用についてである。このような訴訟物の特徴からすれば,簡易迅速をその制度趣旨とする簡易裁判所よりも,地方裁判所こそが,その任にふさわしいといえる。
        従って,本件においても,御庁において審理及び判決を言い渡されることが望ましい。
  5 被告アイフル株式会社の姿勢について
     特に近時,消費貸借契約から生じた過払金返還請求事件においては,被告アイフル株式会社が詳細な答弁書を提出して,法律問題を争う姿勢を示しているように,重要な法律問題が存在し,地方裁判所で審理するのが相当である。
  6 結論
      よって,被告アイフル株式会社の移送の申立ては,却下されるべきである。

	



   

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