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CFJに対する原告第1準備書面(全面公開) 電話 06-6136-1020
平成23年5月,これまで,訴訟前の和解か訴訟提起後でも,訴外和解をしてきたCFJがとうとう全面戦争を布告してきました。

アイフルや全面降伏前夜の武富士の準備書面ほどの量ではありませんが,論点は,きっちりと押さえています。
邪推ですが,武富士の残党をCFJが雇ったように思えます。

ここであげられている論点は,次の二つです。

1 CFJは,民法704条の
「悪意の受益者」に当たるか。

2 
一連取引取引の分断があるか。

段落の項目は,次のとおり,大から小項目となっています。
第1章⇒第1⇒1⇒(1)⇒ア⇒(ア)⇒a⇒(a)

この準備書面の著作権は,弁護士佐野隆久にありますが,自由に使い回してくださって結構です。

CFJ士の答弁書に対する大阪の弁護士の第1準備書面を公開します。

ワープロを平打ちしたため,誤字脱字が多いかもしれませんが,ご容赦下さい。


 原告は,被告CFJ合同会社(以下,「被告CFJ」という。),シンキ株式会社(以下,「被告シンキ」という。)及び株式会社ライフ(以下,「被告ライフ」という。)の答弁書に対して,次のとおり,認否及び反論する。

第1章 被告CFJ答弁書に対する認否及び反論

第1 「第2.請求の原因に対する答弁・認否(被告CFJ合同会社に対する部分)」について
1 「1」について
不知。争う趣旨ではない。
2 「3」について
(1) 「(2)」及び「(3)」について
ア 被告CFJの主張の要旨
本件取引は,単一の基本契約に基づく一連の取引ではなく,平成13年12月8日から平成18年3月31日までの取引(以下,「第1取引」という。)と,平成18年8月27日から平成21年12月1日までの取引(以下,「第2取引」という。)に分断される。
イ 原告の認否及び反論
本件取引は,単一の基本契約に基づく一連の取引である。
被告CFJは,「第5.取引の個別性及び一連充当計算の可否」の項で理由を述べているので,原告は,同項に関する反論のところで,反論及び理由を述べる。
(2) 「(4)」について
ア 被告CFJの主張
被告が「悪意の受益者」(民法704条)に該当するとの原告主張については,否認もしくは争う。
イ 原告の認否及び反論
被告CFJは,悪意の受益者である。
被告CFJは,「第4.被告は悪意の受益者に該当しないこと」で持論を展開しているので,原告は,同項に対する反論のところで,反論及び理由を述べる。

第2 「第3.訴状別紙計算書に対する答弁・認否」について
1 被告CFJの主張の要旨
第1取引ないし第2取引を1つの取引として一連計算している点及び,被告を悪意の受益者とする過払利息を付している点については,否認する。
2 原告の認否及び反論
(1) 被告CFJは,「第5.取引の個別性及び一連充当計算の可否」の項で理由を述べているので,原告は,同項に関する反論のところで,反論及び理由を述べる。
(2) 被告CFJは,「第4.被告は悪意の受益者に該当しないこと」で持論をを展開しているので,原告は,同項に対する反論のところで,反論及び理由を述べる。

第3 「第4.被告は悪意の受益者に該当しないことについて」に対する反論
1 「1.はじめに」について
(1) 被告CFJの主張の要旨
被告は悪意の受益者に該当しない。
(2) 原告の認否及び反論
被告CFJは,悪意の受益者に該当する。被告CFJの主張は,最高裁平成21年7月10日判決の解釈を誤るものである。

2 「2.最高裁の『悪意の受益者』に関する解釈について」について
(1) 「(1)」について
ア 第1段落
(ア) 被告CFJの主張
そもそも,最高裁平成19年7月13日判決(同庁平成18年(受)第276号,民集第61巻5号1980頁,以下,「平成19年判決」という。)は,「貸金業者が制限超過部分を利息の債務の弁済として受領したが,その受領につき貸金業法43条1項の適用が認められない場合には,当該貸金業者は,同項の適用があるとの認識を有しており,かつ,そのような認識を有するに至ったことについてやむを得ないといえる特段の事情があるときでない限り,法律の原因がないことを知りながら過払金を取得した者,すなわち民法704条の『悪意の受益者』であると推定されるものというべきである。」と判示している為,みなし弁済が成立しない場合であっても,貸金業法43条1項の適用があると貸金業者が認識しており,かつ,当該認識を有するに至ったことがやむを得ないといえる特段の事情の存在する限り,「悪意の受益者」であると推定することはできないものと解される。
(イ) 原告の認否及び反論
a 最高裁平成19年7月13日判決の存在については,認める。その余については,否認及び争う。
b 被告CFJは,最高裁平成19年7月13日判決の解釈を誤っている。
c すなわち,被告CFJは,「みなし弁済が成立しない場合であっても,貸金業法43条1項の適用があると貸金業者が認識しており,かつ,当該認識を有するに至ったことがやむを得ないといえる特段の事情の存在する限り,『悪意の受益者』であると推定することはできないものと解される。」と主張する。
d しかし,同判決は,明確に「貸金業者が利息制限法の制限超過利息を受領したが,その受領につき貸金業法43条1項の適用が認められないときは,当該貸金業者は,同項の適用があるとの認識を有しており,かつ,そのような認識を有するに至ったことがやむを得ないといえる特段の事情がある場合でない限り,法律上の原因がないことを知りながら過払金を取得した者,すなわち民法704条『悪意の受益者』であると推定される」ものとしている。
e 従って,被告CFJの主張は,同判決に関する解釈を誤っており,,理由がない。
イ 第2段落
(ア) 被告CFJの主張
この点,最高裁平成21年7月10日判決(同庁平成20年(受)第1728号,民集第63巻6号1170頁,以下,「平成21年判決」という。)も,「充足しない適用要件がある場合には,その適用要件との関係で上告人が悪意の受益者であると推定されるか否か等について検討しなければ,上告人が悪意の受益者であるか否かの判断ができないものというべきである。」と判示している為,みなし弁済が成立しない場合でも,直ちに貸金業者が「悪意の受益者」であると推定される訳ではないことは明白である。
(イ) 原告の認否及び反論
a 最高裁平成21年7月10日判決(同庁平成20年(受)第1728号,民集第63巻6号1170頁)の存在については,認める。その余については,否認及び争う。被告CFJが引用する判決文の存在について,否認及び争う。
b 被告CFJが引用する同判決の引用及び裁判要旨は,誤りがある。
c すなわち,同判決の裁判要旨は,次のとおりである。
「期限の利益喪失特約の下での利息制限法所定の制限を超える利息の支払いの任意性を初めて否定した最高裁平成16年(受)第1518号同18年1月13日第二小法廷判決・民集60巻1号1ページの言渡日以前になされた制限超過部分の支払について,貸金業者が同特約の下でこれを受領したことのみを理由として当該貸金業者を民法704条の『悪意の受益者』と推定することはできない。」
d このように,被告CFJは,最高裁平成21年判決の名を借りて,独自の見解を述べたものである。
e 従って,被告CFJの主張は,理由がいない。

(2) 「(2)」について
ア 第1段落
(ア) 被告CFJの主張
そして,平成21年判決は,期限の利益喪失特約の下での弁済につき,最高裁平成18年1月13日判決(同庁平成16年(受)第1518号,民集60巻1号1頁,以下,「平成18年判決」という。)を踏襲し,「債務者が利息として任意に支払った」ものではないことを肯定したうえ,「平成18年判決が言い渡されるまでは,貸金業者において,期限の利益喪失特約下の支払であることから直ちに同項の適用が否定されるものではないとの認識を有していたとしてもやむを得ないというべきであり,貸金業者が上記認識を有していたことについては,平成19年判決の判示する特段の事情があると認めるのが相当である。」と判示している。
(イ) 原告の認否及び反論
a 最高裁平成21年7月10日判決(同庁平成20年(受)第1728号,民集第63巻6号1170頁)の存在については,認める。その余については,否認及び争う。
b 被告CFJは,同判決を切り貼りして,独自の見解を展開するに過ぎない。
c すなわち,同判決の裁判要旨は,次のとおりである。
「期限の利益喪失特約の下での利息制限法所定の制限を超える利息の支払いの任意性を初めて否定した最高裁平成16年(受)第1518号同18年1月13日第二小法廷判決・民集60巻1号1ページの言渡日以前になされた制限超過部分の支払について,貸金業者が同特約の下でこれを受領したことのみを理由として当該貸金業者を民法704条の『悪意の受益者』と推定することはできない。」
d このように,被告CFJは,最高裁平成21年判決の名を借りて,独自の見解を展開するに過ぎない。
e 従って,被告CFJの主張は,理由がない。
 第2段落及び第3段落
(ア) 被告CFJの主張
そして,そのように解する理由として,「平成18年判決が言い渡されるまでは,平成18年判決が示した期限の利益喪失特約の下での制限超過部分の支払(以下「期限の利益喪失特約下の支払」という。)は原則として貸金業法43条1項にいう「債務者が利息として任意に支払った」ものということはできないとの見解を採用した最高裁判所の判例はなく,下級審の裁判例や学説においては,このような見解を採用するものは少数であり,大多数が,期限の利益喪失特約下の支払というだけではその支払の任意性を否定することができないとの見解に立って,同項の規定の適用要件の解釈をしていたことは公知の事実である。平成18年判決と同旨の判断を示した最高裁平成16年(受)第424号同18年1月24日第三小法廷判決・裁判集民事219号243頁においても,上記大多数の見解と同旨の個別意見が付されている。」ことを挙げている。
すなわち,平成21年判決は,当該事件における個別具体的な取引の状況を検討するのではなく,その当時の判例や学説の状況を一般的に考察することにより,上記特段の事情の有無を判断している。故に,17条書面の交付に係る特段の事情の有無や,18条書面の交付に係る特段の事情の有無についても,一般的な取引状況を検討すれば足りると解される。
(イ) 原告の認否及び反論
a 被告CFJの主張は,独自の見解を展開するに過ぎず,理由がない。
b すなわち,被告CFJは,「任意性」という主観的要件と悪意の推定の要件である貸金業法43条1項の客観的要件を混同するという誤りを犯している。
c すなわち,同判決の裁判要旨は,次のとおりである(再掲)。
「期限の利益喪失特約の下での利息制限法所定の制限を超える利息の支払いの任意性を初めて否定した最高裁平成16年(受)第1518号同18年1月13日第二小法廷判決・民集60巻1号1ページの言渡日以前になされた制限超過部分の支払について,貸金業者が同特約の下でこれを受領したことのみを理由として当該貸金業者を民法704条の『悪意の受益者』と推定することはできない。」
d このように,最高裁平成21年判決は,貸金業法43条1項の客観的要件である17条書面及び18条書面の解釈については,何ら触れていない。
e なお,平成21年判決の差戻審判決(東京高裁平成21年11月26日判決)では,「貸金業法17条・18条書面交付の要件を欠くとして,貸金業者が貸金業法43条1項の適用があると認識していたとしても,そのような認識を有するに至ったことがやむを得ないといえる特段の事情があると言うことはできない。」として,貸金業者を悪意の受益者と認めた。
f よって,「17条書面の交付に係る特段の事情の有無や,18条書面の交付に係る特段の事情の有無についても,一般的な取引状況を検討すれば足りる」とする被告CFJの主張は,理由がない。

(3) 「(3)」について
ア 被告CFJの主張の要旨
東京高裁平成22年10月27日判決(同庁平成22年(ネ)第3784号,以下,「東京高裁判決」という。)は,次の要件を充たせば,被告が借主に対し17条書面又は18条書面を交付する業務体制を構築していたことが認められているとしている。
① 契約書を借主に交付していたこと
② ATMでの貸付及び店頭での貸付の都度,遅滞なく,借主に対し17条書面を交付する業務体制を取っていたこと
③ ATM店頭での弁済及び提携ATM又は店頭での弁済の都度,遅滞なく,借主に対し18条書面を交付する業務体制を取っていたこと
イ 原告の認否及び反論
被告CFJの引用する東京高裁平成22年10月27日判決は,最高裁判所ホームページの判例検索にも掲載されておらず,前例としての価値がない。
よって,被告CFJの主張は,理由がない。

(
4) 「(4)」について
ア 被告CFJの主張の要旨
一般的立証で足りるとされる見解が支持される裏づけとしては,被告会社の資料の保管状況からも優に認められるべきである。
イ 原告の認否及び反論
不知。争う趣旨である。
乙2号証の1乃至乙2号証の5は,撮影された日時について,「H22.10」と証拠説明書にあるのみであり,正確な記載がなされていない。場所に至っては,記載さえされていない。
従って,成立自体を争う。
仮に,乙2号証の1乃至乙2号証の5の写真が真実であったとするならば,被告CFJが顧客資料を適時に抽出することが出来ないことを表している。
従って,被告CFJの顧客資料の保管資料状況は,杜撰である。
このように,被告CFJは,自らの顧客資料の保管状況の杜撰さを理由として,原告に対して交付したとする17条書面及び18条書面を証拠として開示せず,自ら立証を放棄している。


3 「3.貸付の際に17条書面を交付していたこと」について
(1) 「(1)」について
ア 被告CFJの主張(原文ママ)
被告の極度額借入契約書兼告知書のサンプル(乙第3号証の1・2)には,17条書面の受領者署名欄が存在するし,また,領収証兼ご利用明細票のサンプル(乙第4号証の1・2)によれば,当該標準書式が客観的に存在し,かつ,同書式がATM(現金自動預払機)から機械的に交付されていたという一般的な状況を確認することができる。
イ 原告の認否及び反論
(ア) 否認及び争う。
(イ) 乙3号証及び乙4号証は,原告に対して交付されたものではない。また,乙3号証及び乙4号証は,貸金業法17条の要件を充たしていない。なお,被告CFJが原告に対して交付した書面が貸金業法17条の要件の充足していることについては,貸金業者である被告CFJが主張・立証責任を負う。それにもかかわらず,被告CFJは,かかる主張・立証を行っていない。

(2) 「(2)」について
ア 被告CFJの主張(原文ママ)
もっとも,上記書面には,「返済期間及び返済回数」が記載されていない為,最高裁平成17年12月15日判決(同庁平成17年(受)第560号,民集第59巻10号2899頁,以下,「平成17年判決」という。)によれば,17条書面として認めることはできない為,「貸付の都度,17条書面を交付したこと」という要件を充足しないかもしれない。
イ 原告の認否及び反論
認める。
乙3号証及び乙4号証は,明らかに「返済期間及び返済回数」が記載されておらず,17条書面ではない。

(3) 「(3)」について
ア 第1段落
(ア) 被告CFJの主張(原文ママ)
しかしながら,リボルビング返済方式を採用した基本契約の下では,極度額の範囲内で借入れ及び返済を繰り返すことが予定されている為,予め「返済期間及び返済回数」を記載することは不可能であるうえ,そのような場合であっても,「返済期間及び返済回数」を17条書面に記載しなければならないことを示した下級審の裁判例及び学説が大多数を占めていたという一般的な状況にはなかったことに鑑みれば,被告が,当該書面の交付をもって,貸金業法43条1項の適用があるとの認識を有するに至ったとしても,やむを得ないといえる特段の事情を認めることができる。
(イ) 原告の認否及び反論
a 否認及び争う。
b 被告CFJは,最高裁平成17年12月15日判決(平成17年(受)第560号,民集第59巻10号2899ページ,以下「最高裁平成17年判決」という。)を無視するものである。

c 最高裁平成17年判決は,次のとおりである。
「主   文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理   由
上告人の上告受理申立て理由第一について
1 原審の適法に確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。
(1) 上告人は,貸金業の規制等に関する法律(以下「法」という。)3条所定の登録を受けた貸金業者である。
(2) 上告人は,平成3年4月13日,被上告人との間で,次の内容の金銭消費貸借基本契約を締結し,その契約書を被上告人に交付した(以下,この契約を「本件基本契約」といい,この契約書を「本件基本契約書」という。)。
ア 借入限度額 20万円 借主は,借入限度額の範囲内であれば繰り返し借入れをすることができる。
イ 借入利率 年43.8%
ウ 返済方法 毎月15日限り元金1万5000円以上と支払日までの経過利息を支払う。
(3) 上告人は,平成3年4月13日から平成14年5月20日までの間,被上告人に対し,本件基本契約に基づき,第1審判決別紙計算書の『年月日』欄記載の日に,『借入額』欄記載のとおり金銭を貸し付け(以下,これらの貸付けを併せて『本件各貸付け』という。),被上告人から,同計算書の『年月日』欄記載の日に,『返済額』欄記載のとおり弁済を受けた(以下,これらの弁済を併せて『本件各弁済』という。)。
(4) 上告人は,本件各貸付けの都度,被上告人に対し,営業店の窓口における貸付けの場合には『領収書兼取引確認書』又は『残高確認書』と題する書面を,現金自動入出機(ATM)を利用した貸付けの場合には『領収書兼ご利用明細』と題する書面(以下,この書面と上記『領収書兼取引確認書』又は『残高確認書』と題する書面を併せて『本件各確認書等』という。)を,それぞれ交付した。
(5) 本件基本契約書と本件各確認書等のいずれにも,法17条1項6号に掲げる『返済期間及び返済回数』や貸金業の規制等に関する法律施行規則(昭和58年大蔵省令第40号。以下『施行規則』という。)13条1項1号チに掲げる各回の『返済金額』の記載はない。
2 本件は,被上告人が,上告人に対し,本件各弁済の弁済金のうち,利息制限法所定の制限利率により計算した金額を超えて支払った部分を元本に充当すると過払金を生じていると主張して,不当利得返還請求権に基づいて,過払金の返還等を求める事案である。
これに対し,上告人は,貸金業者は,貸付けに係る契約を締結したときは,法17条1項各号に掲げる事項についてその契約の内容を明らかにする書面(以下『17条書面』という。)を貸付けの相手方に交付しなければならないとされているところ,本件基本契約は,返済方法について返済額の決定を被上告人にゆだねる内容となっているため,上告人において法17条1項6号に掲げる『返済期間及び返済回数』や施行規則13条1項1号チに掲げる各回の『返済金額』を記載することは不可能であるから,上告人が被上告人に対して法17条1項所定のその余の事項を記載した書面を交付していれば,17条書面を交付したことになるのであって,本件各弁済は法43条1項の規定の適用要件を満たしており,同項により,利息制限法1条1項所定の制限利率により計算した金額を超えて支払った利息部分は有効な利息債務の弁済とみなされ,元本に充当されることにはならないから,過払金は生じていないと主張して,被上告人の上記主張を争っている。
3(1) 貸金業者の業務の適正な運営を確保し,資金需要者等の利益の保護を図ること等を目的として,貸金業に対する必要な規制等を定める法の趣旨,目的(法1条)等にかんがみると,法43条1項の規定の適用要件については,これを厳格に解釈すべきものであり,17条書面の交付の要件についても,厳格に解釈しなければならず,17条書面として交付された書面に法17条1項所定の事項のうちで記載されていない事項があるときは,法43条1項の規定の適用要件を欠くというべきである(最高裁平成15年(オ)第386号,同年(受)第390号同16年2月20日第二小法廷判決・民集58巻2号475頁参照)。そして,仮に,当該貸付けに係る契約の性質上,法17条1項所定の事項のうち,確定的な記載が不可能な事項があったとしても,貸金業者は,その事項の記載義務を免れるものではなく,その場合には,当該事項に準じた事項を記載すべき義務があり,同義務を尽くせば,当該事項を記載したものと解すべきであって,17条書面として交付された書面に当該事項に準じた事項の記載がないときは,17条書面の交付があったとは認められず,法43条1項の規定の適用要件を欠くというべきである。
(2) 前記事実関係によれば,本件各貸付けは,本件基本契約に基づいて行われたものであるが,本件基本契約の内容は,① 被上告人は,借入限度額の範囲内であれば繰り返し借入れをすることができる,② 被上告人は,元金について,返済すべき金額の最低額(以下『最低返済額』という。)を超える金額であれば,返済額を自由に決めることができる,というものであることが明らかである。
すなわち,本件各貸付けは,本件基本契約の下で,借入限度額の範囲内で借入れと返済を繰り返すことを予定して行われたものであり,その返済の方式は,追加貸付けがあっても,当該追加貸付けについての分割払の約束がされるわけではなく,当該追加貸付けを含めたその時点での本件基本契約に基づく全貸付けの残元利金(以下,単に『残元利金』という。)について,毎月15日の返済期日に最低返済額及び経過利息を支払えば足りるとするものであり,いわゆるリボルビング方式の一つである。したがって,個々の貸付けについての『返済期間及び返済回数』や各回の『返済金額』(以下,『返済期間及び返済回数』と各回の『返済金額』を併せて『返済期間,返済金額等』という。)は定められないし,残元利金についての返済期間,返済金額等は,被上告人が,今後,追加借入れをするかどうか,毎月15日の返済期日に幾ら返済するかによって変動することになり,上告人が,個々の貸付けの際に,当該貸付けやその時点での残元利金について,確定的な返済期間,返済金額等を17条書面に記載して被上告人に交付することは不可能であったといわざるを得ない。
(3) しかし,本件各貸付けについて,確定的な返済期間,返済金額等を17条書面に記載することが不可能であるからといって,上告人は,返済期間,返済金額等を17条書面に記載すべき義務を免れるものではなく,個々の貸付けの時点での残元利金について,最低返済額及び経過利息を毎月15日の返済期日に返済する場合の返済期間,返済金額等を17条書面に記載することは可能であるから,上告人は,これを確定的な返済期間,返済金額等の記載に準ずるものとして,17条書面として交付する書面に記載すべき義務があったというべきである。そして,17条書面に最低返済額及び経過利息を毎月15日の返済期日に返済する場合の返済期間,返済金額等の記載があれば,借主は,個々の借入れの都度,今後,追加借入れをしないで,最低返済額及び経過利息を毎月15日の返済期日に返済していった場合,いつ残元利金が完済になるのかを把握することができ,完済までの期間の長さ等によって,自己の負担している債務の重さを認識し,漫然と借入れを繰り返すことを避けることができるものと解され,確定的な返済期間,返済金額等の記載に準じた効果があるということができる。
前記事実関係によれば,本件基本契約書の記載と本件各確認書等の記載とを併せても,確定的な返済期間,返済金額等の記載に準ずる記載があると解することはできない。したがって,本件各貸付けについては,17条書面の交付があったとは認められず,法43条1項の規定の適用要件を欠くというべきである。
4 以上と同旨の原審の判断は,正当として是認することができる。論旨は,採用することができない。よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。」
d 最高裁平成17年判決の要旨は,次のとおりである。
(a) 仮に,当該貸付けに係る契約の性質上,法17条1項所定の事項のうち,確定的な記載が不可能な事項があったとしても,貸金業者は,その事項の記載義務を免れるものではなく,その場合には,当該事項に準じた事項を記載すべき義務があり,同義務を尽くせば,当該事項を記載したものと解すべきである。
(b) 本件各貸付けについて,確定的な返済期間,返済金額等を17条書面に記載することが不可能であるからといって,上告人は,返済期間,返済金額等を17条書面に記載すべき義務を免れるものではなく,個々の貸付けの時点での残元利金について,最低返済額及び経過利息を毎月15日の返済期日に返済する場合の返済期間,返済金額等を17条書面に記載することは可能であるから,上告人は,これを確定的な返済期間,返済金額等の記載に準ずるものとして,17条書面として交付する書面に記載すべき義務があったというべきである。
e 被告CFJの主張は,最高裁平成17年判決を無視するものであり,理由がない。

イ 第2段落
(ア) 被告CFJの主張の要旨
前述の東京高裁判決は,『返済間及び返済回数』及び各回の『返済金額』の記載について,その要件を満たしていた平成16年10月以降はもちろんのこと,それ以前についても,アイク及び控訴人が,17条書面の要件を満たしているとの認識を有するに至ってもやむを得ないというべきである。」と判示している。
(イ) 原告の認否及び反論
被告CFJが引用する東京高裁の判決の存否について,不知。
同東京高裁判決は,最高裁判所ホームページの判例検索にも掲載されておらず,先例としての価値はない。
よって,被告CFJの主張は,理由がない。


4 「4 弁済を受ける度に18条書面を交付していたこと」について
(1) 「(1)」について
ア 被告CFJの主張
被告の領収証兼ご利用明細票のサンプル(乙第5号証の1・2)によれば,当該標準書式が客観的に存在し,かつ,同書式がATM(現金自動預払機)から機械的に交付されていたという一般的な状況を確認することができる。
イ 原告の認否及び反論
否認及び争う。
乙5号証の1・2は,平成7年8月6日及び同年10月4日に作成されたものである。これに対して,原告・被告CFJ間の取引は,平成13年12月8日に開始している。このことから,乙5号証の1・2は,明らかに本件とは関係のない文書である。
また,仮に,被告CFJが原告に対して交付した書式を提出したとしても,被告CFJが原告に対して,18条書面を交付したことを立証したとはいえない。

(2) 「(2)」について
ア 被告CFJの主張
もっとも,上記書面には,「契約年月日」が記載されていない為,平成18年判決によれば,18条書面として認めることはできない為,「弁済の都度,18条書面を交付したこと」という要件を充足しないかもしれない。
イ 原告の認否及び反論
(ア) 乙5号証の1・2について,「契約年月日」が記載されていないことについて,認める。
(イ) なお,被告CFJは,乙5号証の1・2が18条の要件を充足していることを主張・立証していない。
(ウ) 18条書面の要件に関して,先例となる判例は,平成19年7月13日最高裁判所第2小法廷判決(平成18年(受)第276号)である。同判決の要旨は,次のとおりである。

「少なくとも平成11年判決以後において,貸金業者が,事前に債務者に上記償還表を交付していれば18条書面を交付しなくても貸金業法43条1項の適用があるとの認識を有するに至ったことについてやむを得ないといえる特段の事情があるというためには,平成11年判決(最高裁平成8年(オ)第250号同11年1月21日第一小法廷判決・民集53巻1号98頁)以後,上記認識に一致する解釈を示す裁判例が相当数あったとか,上記認識に一致する解釈を示す学説が有力であったというような合理的な根拠があって上記認識を有するに至ったことが必要であり,上記認識に一致する見解があったというだけで上記特段の事情があると解することはできない。
 したがって,平成16年判決(最高裁平成14年(受)第912号同16年2月20日第二小法廷判決・民集58巻2号380頁)までは,18条書面の交付がなくても他の方法で元金・利息の内訳を債務者に了知させているなどの場合には貸金業法43条1項が適用されるとの見解も主張され,これに基づく貸金業者の取扱いも少なからず見られたというだけで被上告人が悪意の受益者であることを否定した原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。」
(3) 「(3)」について
ア 被告CFJの主張
しかしながら,当時施行されていた貸金業規制法施行規則15条2項には,「貸金業者は,法第十八条第一項の規定により交付すべき書面を作成するときは,当該弁済を受けた債権に係る貸付けの契約番号その他により明示することをもって同項第一号から第三号並びに前第二号及び第三号に掲げる事項の記載に代えることができる。」と規定され,「契約年月目」の記載を省略することが法令によって承認されていた為,全ての貸金業者は契約番号を記載することにより,「契約年月日」の記載に代えていたという一般的な状況に鑑みれば,被告が,当該書面の交付をもって,貸金業法43条1項の適用があるとの認識を有するに至ったとしても,やむを得ないといえる特段の事情を認めることができる。
この点,既に援用した東京高裁判決も,被告の上記見解を支持している。
イ 原告の認否及び反論
否認及び争う。
被告CFJの主張は,前出の平成19年7月13日最高裁判所第2小法廷判決(平成18年(受)第276号)を無視するものであり,理由がない。


5 「5.支払いの任意性について」について
(1) 「(1)」について
ア 被告CFJの主張
平成21年判決は,「平成18年判決が言い渡されるまでは,貸金業者において,期限の利益喪失特約下の支払であることから直ちに同項の適用が否定されるものではないとの認識を有していたとしてもやむを得ないというべきであり,貸金業者が上記認識を有していたことについては,平成19年判決の判示する特段の事情があると認めるのが相当である。したがって,平成18年判決の言渡し日以前の期限の利益喪失特約下の支払については,これを受領したことのみを理由として当該貸金業者を悪意の受益者であると推定することはできない。」と判示しており,支払いの任意性につき,被告には平成18年判決が言渡される以前は貸金業法43条1項の適用があるとの認識を有するに至った,やむを得ないといえる特段の事情が認められる。
イ 原告の認否及び反論
平成21年判決の存在については,認める。
(2) 「(2)」について
ア 被告CFJの主張の要旨
ところで,平成21年判決の反対解釈から,平成18年判決以降については,被告を悪意の受益者と推定することができるとの主張がなされる場合がある。
しかしながら,平成18年判決以前はもとより,同判決以降についても被告には貸金業法43条1項の要件が満たされるとの認識を有しており,かつ,そのような認識を有するに至ったことについてやむを得ない特段の事情が存在するため,悪意の受益者と推定することはできず,このことは,多数の裁判例においても確認されている。
イ 原告の認否及び反論
否認及び争う。
前述のとおり,被告CFJは,最高裁平成21年判決の理解を誤っていることから,これを前提とした主張には,理由がない。

(3) 「(3)」について
ア 被告CFJの主張
なお,平成18年判決以降も被告を悪意の受益者と推定することはできないという解釈が認められないとしても,少なくとも平成18年判決以前の取引に関する限り,被告を悪意の受益者と推定することはできないとの解釈は,多数の裁判例において確認されている。すなわち,岐阜地裁多治見支部平成21年7月30日判決(同庁平成21年(ワ)第51号),横浜地裁横須賀支部平成21年11月24日判決(同庁平成21年(ワ)第149号),千葉地裁木更津支部平成22年3月2日判決(同庁平成21年(ワ)第125号),横浜地裁横須賀支部平成22年3月12日判決(同庁平成21年(ワ)第280号),東京地裁平成22年9月16日判決(同庁平成22年(ワ)第3956号),大阪地裁平成22年9月27日判決(同庁平成21年(ワ)第14754号),東京地裁平成22年10月25日判決(同庁平成22年(ワ)第12526号)などによって確認されている。
また,大阪高裁平成23年2月4日判決(同庁平成22年(ネ)第2482号,第3131号,乙第7号証)は,「…以上の認定に対し,控訴人は,銀行振込みによる返済の場合に被控訴人が控訴人に対し受取証書を交付したとは認められず,また,その受取証書並びに基本契約書及び利用明細書の記載内容は法18条又は17条所定の記載要件をいずれも満たしていないから,被控訴人が法43条1項の適用があるとの認識を有し,かつ,そのような認識を有することに至ったことについてやむを得ないといえる特段の事情があったとは認められない旨主張するが,同主張が採用できず,被控訴人が平成17年判決が言い渡される以前は悪意の受益者とは認められないことは,上記説示のとおりである。」と判示し,平成17年判決が言い渡される以前の取引については,被告を悪意の受益者と推定することはできないと判断している。
イ 原告の認否及び反論
a 否認及び争う。
b 前述のとおり,被告CFJは,最高裁平成21年判決の理解を誤っていることから,これを前提とした主張には,理由がない。
c また,被告が引用する判決は,全て最高裁判所ホームページの判例検索に登載されておらず,先例としての意味を持たない。
d 最高裁平成21年判決の差戻審判決である東京高裁平成21年11月26日判決は,次のように述べている。

「(2) 争点(二)(貸金債務に充当される過払金について民法704条の利息が発生するか)について
ア 貸金業者が制限超過部分を利息の債務の弁済として受領したが,その受領につき貸金業法43条1項の適用が認められないときは,当該貸金業者は,同項の適用があるとの認識を有しており,かつ,そのような認識を有するに至ったことがやむを得ないといえる特段の事情があるときでない限り,法律上の原因がないことを知りながら過払金を取得した者,すなわち民法704条の『悪意の受益者』であると推定されるものというべきである(最高裁平成19年7月13日判決,最高裁平成18年(受)第1666号同19年7月17日第三小法廷判決・裁判所時報1440号298頁)。
イ 被控訴人Y1(本件取引1)について
(ア)a 被控訴人Y1に対する平成7年9月18日の貸付け(計算書1のNo.1)については,17条書面の交付を認めるに足りる証拠がない。また,同被控訴人に対する平成8年4月9日(同No.10),同年12月16日(同No.21),平成9年10月7日(同No.33),平成10年9月16日(同No.46),平成11年3月29日(同No.55),平成12年1月17日(同No.59),同年9月5日(同No.69),平成13年4月18日(同No.79)の各貸付けについては,借用証書(『省令第16条第3項に基づく書面の写』と題する書面。以下同じ。)が交付されているところ,その『各回の支払金額』欄には元利金として一定額の記載のほか,『別紙償還表記載のとおりとします。』との記載があるが,その償還表が交付されたことを認めるに足りる的確な証拠がない。そうすると,これらの借用証書は,17条書面の記載要件を欠くこととなる(最高裁平成19年7月13日判決)。
したがって,上記各貸付けは,いずれも貸金業法43条1項の17条書面交付の要件を充足していないこととなる。
b そして,上記a掲記のものを除く各貸付けに係る弁済(計算書1のNo.88以降の弁済)のうち,少なくとも被控訴人Y1の平成14年6月17日(同No.96及び97の2回),平成15年2月12日(同No.106及び107の2回),同年10月27日(同No.118),平成16年4月23日(同No.125及び126の2回),同年11月17日(同No.134及び135の2回)を除く46回の弁済については,控訴人が18条書面を交付したことを認めるに足りる的確な証拠はない。
18条書面は,弁済の事実及び貸金業者の受領金額のほか,貸金業者が受領した金額を利息,損害金及び元本のいずれにいくら充当したかを弁済者に明らかにすることによって,債務者に充当計算の手がかりを与えることにあると考えられること,債務者としては正確な充当関係はあらかじめ交付を受けている契約書面等の記載を合わせて把握できれば足りることからすれば,一般に,上記の額等の記載については,必ずしも正確なものであることを要しないと解される。
しかし,上記のとおり,被控訴人Y1について,借用証書及び償還表の交付が認められる貸金に係る弁済のうち,18条書面の交付が認められるものはごくわずかであって,そのほとんどにつき貸金業法43条1項の適用がないことは明らかであるから,改めて計算するまでもなく,18条書面の記載と客観的に正しい額が大幅に乖離することは明らかである。このような場合には,もはや控訴人が18条書面として交付した『領収書兼残高確認書』と題する書面は,上記にいう債務者に充当計算の手がかりを与える機能を全く喪失しているものであって,そのような書面の交付は,もはや,同法43条1項所定の18条書面交付の要件を充足しないというべきである。
c 以上からすると,被控訴人Y1の制限超過部分の支払については,貸金業法43条1項の適用はないこととなる。
(イ) そして,上記のような17条書面及び18条書面の各交付要件の欠缺については,控訴人は当然に認識し得たものであるし,仮に,控訴人が貸金業法43条1項の適用があると認識していたとしても,上記に認定した交付要件の欠缺の性質及び態様に照らせば,そのような認識を有するに至ったことがやむを得ないといえる特段の事情があるということはできない。なお,弁論の全趣旨によれば,18条書面が交付されていない支払は,振込の方法によるものと認められるが,振込返済の場合であっても18条書面の交付を要すると判示した最高裁平成11年1月21日判決の公刊前であっても,交付必要説が学説上,下級審裁判例上の圧倒的多数説であったこと(当裁判所に顕著である。),借用証書と一体をなす償還表の交付がない場合に17条書面交付の要件を否定した最高裁平成19年7月13日判決の公刊前であっても,かような償還表が18条書面の記載要件の一部をなすことはその性質に照らし容易に認識可能であったと認められることからすれば,被控訴人Y1の弁済の一部が上記最高裁判所の各判決の公刊前であることをもって,上記特段の事情の判断を動かすに足りないというベきである。
したがって,被控訴人Y1の制限超過部分の支払について,控訴人において民法704条の悪意があったと認められる。」
e このように,平成21年最高裁判決を前提とした差戻審は,明解に「17条書面及び18条書面の各交付要件の欠缺については,控訴人は当然に認識し得たものであるし,仮に,控訴人が貸金業法43条1項の適用があると認識していたとしても,上記に認定した交付要件の欠缺の性質及び態様に照らせば,そのような認識を有するに至ったことがやむを得ないといえる特段の事情があるということはできない。」と結論づけている。
f 従って,被告CFJが民法704条の悪意の受益者であることは明らかである。


6 「6.結論」について
(1) 被告CFJの主張
以上により,被告は,貸金業法43条1項の適用があるとの認識を有しており,かつ,そのような認識を有するに至ったことについてやむを得ないといえる特段の事情が存在する為,「悪意の受益者」に該当すると推定することはできない。
(2) 原告の認否及び反論
否認及び争う。
被告CFJは,独自の見解を展開するのみであり,その主張は,理由がない。
前述のとおり,被告CFJは,17条書面及び18条書面の各交付要件の欠缺については,当然に認識し得たものであるし,仮に,被告CFJが貸金業法43条1項の適用があると認識していたとしても,上記に認定した交付要件の欠缺の性質及び態様に照らせば,そのような認識を有するに至ったことがやむを得ないといえる特段の事情があるということはできない。


第4 「第5.取引の個別性及び一連充当計算の可否」について
1 「1」について
(1) 被告CFJの主張
原告は,第1取引ないし第2取引を一連充当計算しているが,両取引は単一の基本契約に基づく一連の取引ではないうえ,基本契約を異にする取引間の充当合意は存在しないのが通常であるから,第1取引ないし第2取引を一連充当計算することは出来ない。
(2) 原告の認否及び主張
否認及び争う。
本件は,一連の取引である。

2 「2」について
(1) 被告CFJの主張
確かに,最高裁平成15年7月18日判決(民集57巻7号895頁,以下,「平成15年7月判決」という)は,「借主は,借入れ総額の減少を望み,複数の権利関係が発生するような事態が生じることは望まないのが通常と考えられる」と判示しているが,平成15年7月判決は,上記判示部分の前に,「同一の貸主と借主との問で基本契約に基づき継続的に貸付けとその返済が繰り返される金銭消費貸借取引においては,…」との文言を冠しているので,文理解釈上,基本契約を異にする取引間の当然充当を否定しているものと解される。
この点,平成15年7月判決の判例解説者である中村最高裁調査官は,「本判決は,『過払金は,…弁済当時存在する他の借入金債務』に充当されると判示する。これは,過払金が発生した時点で借入金債務が存在しない場合には,弁済当時存在しない債務への弁済の指定はあり得ないし,弁済当時存在しない債務への弁済を指定しても無効であることから,弁済当時存在しない他の借入金債務への充当を否定する趣旨であると解される(なお,これは各貸付けが別個であることを前提としているのであり,貸付けの個数が1個であれば,弁済当時存在せず,その後に生じた借入金債務にも充当されることになる。)。このように解することが,過払金は,その充当先がない場合には,不当利得返還請求権となることとも符合する。」(最高裁判所判例解説民事篇,平成15年度(下)7月~12月分,466頁目~467頁目,乙第8号証)と解説しているので,平成15年7月判決が基本契約を異にする取引間の当然充当を否定していることは明白である。
(2) 原告の認否及び主張
否認及び争う。
被告CFJは,最高裁判所第2小法廷平成15年7月18日判決同13年(受)第1032号,第1033号の理解を誤っている。同判決は,正確には,次のとおり述べている。

「同一の貸主と借主との間で基本契約に基づき継続的に貸付けが繰り返される金銭消費貸借取引において,借主がそのうちの一つの借入金債務につき法所定の制限を超える利息を任意に支払い,この制限超過部分を元本に充当してもなお過払金が存する場合,この過払金は,当事者間に充当に関する特約が存在するなど特段の事情のない限り,民法489条及び491条の規定に従って,弁済当時存在する他の借入金債務に充当され,当該他の借入金債務の利率が法所定の制限を超える場合には,貸主は充当されるべき元本に対する約定の期限までの利息を取得することができないと解するのが相当である。」
このように,被告CFJの主張は,同判決とは全く異なった主張を行っているに過ぎない。
よって,被告CFJの主張は,理由がない。

3 「3」及び「4」について
(1) 被告CFJの主張
そして,最高裁平成20年1月18日判決(民集62巻1号28頁,以下,「平成20年1月判決」という)は,上記平成15年7月判決を踏襲し,基本契約を異にする取引間の当然充当を否定している。すなわち,平成20年1月判決は,「同一の貸主と借主の間で継続的に貸付けとその弁済が繰り返されることを予定した基本契約が締結され,この基本契約に基づく取引に係る債務の各弁済金のうち制限超過部分を元本に充当すると過払金が発生するに至ったが,過払金が発生することになった弁済がされた時点においては両者の間に他の債務が存在せず,その後に,両者の間で改めて金銭消費貸借に係る基本契約が締結され,この基本契約に基づく取引に係る債務が発生した場合には,第1の基本契約に基づく取引により発生した過払金を新たな借入金債務に充当する旨の合意が存在するなどの特段の事情がない限り,第1の基本契約に基づく取引に係る過払金は,第2の基本契約に基づく取引に係る債務には充当されないと解するのが相当である(最高裁平成18年(受)第1187号同19年2月13日第三小法延判決・民集61巻1号182頁,最高裁平成18年(受)第1887号同19年6月7日判決第一小法廷判決・民集61巻4号1537頁参照)。」と判示している。
とすると,基本契約を異にする取引間の当然充当を主張する原告は,上記特段の事情(充当の合意)の存在を主張立証せねばならないが,その際に考慮すべき諸般の事情として,平成20年1月判決は,「第1の基本契約に基づく貸付け及び弁済が反復継続して行なわれた期間の長さやこれに基づく最終の弁済から第2の基本契約に基づく最初の貸付けまでの期間,第1の基本契約についての契約書の返還の有無,借入れ等に際し使用されるカードが発行されている場合にはその失効手続きの有無,第1の基本契約に基づく最終の弁済から第2の基本契約が締結されるまでの間における貸主と借主の接触の状況,第2の基本契約が締結されるに至る経緯,第1と第2の各基本契約における利率等の契約条件の異同等の事情を考慮して,第1の基本契約に基づく債務が完済されてもこれが終了せず,第1の基本契約に基づく取引と第2の基本契約に基づく取引とが事実上1個の連続した貸付取引であると評価することができる場合には,上記合意が存在するものと解するのが相当である。」と判示している。
(2) 原告の認否及び反論
ア 否認及び争う。
イ 被告CFJの主張は,平成20年1月18日最高裁判決を曲解するものである。同判決の内容は,概ね次のとおりである。

ウ 同判決においては,基本契約が異なる場合に第1の基本契約に基づく取引にかかる過払金が第2の基本契約に基づく取引に係る債務に充当される場合の特段の事情について判示している。その特段の事情として掲げられた中には,「第1の基本契約に基づく貸付け及び弁済が反復継続して行われた期間の長さやこれに基づく最終の弁済から第2の基本契約に基づく最初の貸付けまでの期間」や「第1と第2の各基本契約における利率等の契約条件の異同等」が挙げられている。
エ 本件の場合には,第1の基本契約に基づいて,平成13年12月8日から平成18年3月31日までの約4年3か月という長期にわたって貸付と弁済が繰り返され,その僅か5か月後である平成18年8月27日に,再度貸付がなされており,その契約内容は,全く同じである。このような事情からは,同判決に照らした場合,本件は明らかに,「第1基本契約に基づく取引と第2の基本契約に基づく取引とが事実上1個の連続した貸付取引であると評価することが出来る場合」であって,「第1の基本契約に基づく取引により発生した過払金を新たな借入金債務に充当する旨の合意」が存在するものと解される事案である。
4 「5」について
(1) 被告CFJの主張
ところが,本件では,平成20年1月判決が列挙した諸般の事情について,「第1の基本契約に基づく貸付け及び弁済が反復継続して行なわれた期間の長さやこれに基づく最終の弁済から第2の基本契約に基づく最初の貸付けまでの期間」を除き,現時点では不明であるから,上記特段の事情(充当の合意)の存在を認定することはできない。
この点,本件同様,諸般の事情の大半が不明であった事案において,福岡高裁平成20年6月10日判決(同庁平成19年(ネ)第829号,同庁平成20年(ネ)第251号)は,特段の事情(充当の合意)の存在を否定し,原告の一連充当計算の主張を排斥している。すなわち,上記福岡高裁判決は,「これを本件について検討する。①については,本件取引1が約6年11か月継続し,その終了の約2年5か月後に本件取引2の基本契約が締結されており,本件取引1が終了した時点においては控訴人と被控訴人との間に他の債務は存在しなかった。また,本件取引1(取引回数87回)のうち貸付がなされたのは平成元年7月28日と平成2年1月16日の2回であり,その余の85回は返済である。②については,甲1,乙17の5及び弁論の全趣旨によれば,控訴人は,平成8年6月28日,本件取引1の借入金の返済として6万6726円を受領し,控訴人の計算上全額返済されたとして,同取引を終了扱いとし,同年7月1日ころ,同取引の基本契約書を被控訴人の自宅に郵送する方法で返還したことが認められる。③については,本件取引1に使用されたカードが本件取引1の終了に伴い失効したかどうかは証拠上不明である。④については,本件取引1の終了から本件取引2の基本契約締結までの控訴人と被控訴人の接触状況は不明である(本件取引1と本件取引2の会員番号が同一であることは,前記のとおり本件取引1が終了した後も控訴人が後の取引の可能性を考えていたことを示すにとどまるから,本件取引1の終了から本件取引2の基本契約締結までに控訴人と被控訴人に接触があったことの根拠とはならない。)。⑤については,被控訴人は,本件取引2の申込カード(乙6の1)の『契約種別』欄に『既存』と,『当社を知られた理由』欄に『復活』と各記載されていることを根拠に本件取引2の基本契約が控訴人の勧誘により締結されたと主張するが,前記各記載は被控訴人が本件取引2の申込前に控訴人と取引があったことを示すにとどまるから,前記記載だけでは本件取引2の基本契約が控訴人の勧誘により締結されたと認めることはできず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。一方,控訴人は,本件取引2の基本契約締結に際して被控訴人の信用調査を実施したと主張し,その根拠として乙18を提出するが,同証拠はマスキング部分が多すぎ,これによっては本件取引2の基本契約締結に際して控訴人が被控訴人の信用調査を実施したと認めることはできず,他にこれを認めるに足りる証拠はない。⑥については,本件取引1と本件取引2の各基本契約における利率等の契約条件の異同は証拠上不明である。以上を総合すると,本件取引1の債務が完済されてもこれが終了せず,本件取引1と本件取引2とが事実上1個の連続した貸付取引であると評価することができる場合と認めることはできず,他に控訴人と被控訴人との間において本件取引1の過払金を本件取引2の貸付に充当する旨の合意の存在を認めるに足りる証拠はない。」と判示している。
(2) 原告の認否及び反論
否認及び争う。
本件とは関係のない主張である。
既に,本件を当てはめた場合については,述べた。

5 「6」について
(1) 被告CFJの主張
以上により,本件では,第1取引と第2取引を事実上1個の連続した貸付取引と評価し得ず,充当の合意という特段の事情は存在しないので,第1取引ないし第2取引を一連充当計算することはできない。
(2) 原告の認否及び反論
否認及び争う。
被告CFJは,本件と関係のない事案を引用のうえ,独自の見解を主張するに過ぎない。
本件取引が一連の取引であることは,既に述べた。

6 「7」について
(1) 被告CFJの主張
なお,被告は,第1取引と第2取引を同一の会員番号で管理していたが,会員番号は顧客を特定する為の整理番号に過ぎないので、両取引を同一の会員番号で管理していたことをもって取引の一連性を肯定することは出来ない。
この点,平成20年1月判決も,会員番号の同一性などを理由として取引の一連性を肯定した原判決を破棄したうえ,取引の一連性を判断する際に考慮すべき事情を多数列挙しておきながら,会員番号の同一性を含めていないので,それが取引の一連性の判断要素たり得ないことを示唆したものと解される。
(2) 原告の認否及び反論
ア 平成20年1月18日最高裁判所第2小法廷判決同18年(受)第2268号の存在は認める。
その余については,否認及び争う。
イ 平成20年1月18日最高裁判所第2小法廷判決同18年(受)第2268号は,次のように述べている

「同一の貸主と借主との間で継続的に貸付けとその弁済が繰り返されることを予定した基本契約が締結され,この基本契約に基づく取引に係る債務の各弁済金のうち制限超過部分を元本に充当すると過払金が発生するに至ったが,過払金が発生することとなった弁済がされた時点においては両者の間に他の債務が存在せず,その後に,両者の間で改めて金銭消費貸借に係る基本契約が締結され,この基本契約に基づく取引に係る債務が発生した場合には,第1の基本契約に基づく取引により発生した過払金を新たな借入金債務に充当する旨の合意が存在するなど特段の事情がない限り,第1の基本契約に基づく取引に係る過払金は,第2の基本契約に基づく取引に係る債務には充当されないと解するのが相当である(最高裁平成18年(受)第1187号同19年2月13日第三小法廷判決・民集61巻1号182頁,最高裁平成18年(受)第1887号同19年6月7日第一小法廷判決・民集61巻4号1537頁参照)。そして,第1の基本契約に基づく貸付け及び弁済が反復継続して行われた期間の長さやこれに基づく最終の弁済から第2の基本契約に基づく最初の貸付けまでの期間,第1の基本契約についての契約書の返還の有無,借入れ等に際し使用されるカードが発行されている場合にはその失効手続の有無,第1の基本契約に基づく最終の弁済から第2の基本契約が締結されるまでの間における貸主と借主との接触の状況,第2の基本契約が締結されるに至る経緯,第1と第2の各基本契約における利率等の契約条件の異同等の事情を考慮して,第1の基本契約に基づく債務が完済されてもこれが終了せず,第1の基本契約に基づく取引と第2の基本契約に基づく取引とが事実上1個の連続した貸付取引であると評価することができる場合には,上記合意が存在するものと解するのが相当である。」
ウ ここで挙げられている第1契約と第2契約が事実上1個の連続した貸付取引であることの要件は,「等の事情」とされていることから,明らかに例示であり,会員番号が同一であることを要件から排除する趣旨ではない。
エ 従って,被告CFJが第1契約と第2契約が事実上1個の連続した貸付取引であることの要件から会員番号の同一を排除しているとの主張は,独自の見解に過ぎない。


第5 原告の主張(その1)-被告CFJが悪意の受益者であることについて-
1 不当利得返還請求の悪意の受益者
(1) 民法704条の不当利得の「悪意」とは,受益者において,利得が法律上の原因に基づかないことを知っていたことを意味する。
(2) 従って,過払金返還請求においては,貸金業者においてみなし弁済が成立しないことを知っていたことが悪意の内容となる。貸金業者が顧客に交付する書面は,17条及び18条の法律上の記載要件を満たしておらず,またそれらの書面を交付していないことから,全ての貸金業者は悪意である。
(3) ところで,多くの貸金業者が,「最高裁平成18年1月13日判決前は,みなし弁済が成立すると信じて弁済金を受領していたので善意の受益者である。」と主張してくる。
(4) しかし,この貸金業者の主張は,後述するとおり,独自の見解に基づいており,理由がない。貸金業者の真の目的は,過払利息を免れようというものではなく,訴訟を長引かせて,借り手側の疲弊を待ち,有利な和解に持ち込もうという意図に基づくものに過ぎない。


2 悪意の受益者の立証責任(貸金業者は悪意の受益者と推定される。)
(1) 一般的に民法704条の悪意の受益者に利息を請求する場合,請求する側の原告が被告の悪意を主張・立証する必要がある。
(2) しかし,過払金返還請求の場合,最高裁判所平成19年7月13日判決,同月17日判決は,みなし弁済の成立が認められない場合には,みなし弁済の「適用があるとの認識を有しており,かつ,そのような認識を有するに至ったことについてやむを得ないといえる特段の事情があるときでない限り,法律上の原因がないことを知りながら過払金を取得した者,すなわち,民法704条の『悪意の受益者』であると推定される。」と判断した。
(3) 従って,貸金業者は,貸金業法43条1項のみなし弁済の立証に失敗すれば,みなし弁済が成立していないだけでなく,悪意の受益者と推定され,上記,特段の事情を立証して,悪意の推定を覆さない限り,過払利息の支払い義務を免れない。


3 期限の利益喪失特約下の支払いだけでは悪意の受益者と推定されないこと
(1) 最高裁平成21年7月10日判決(貸金業者エイワ),同月14日判決(貸金業者エイワ)は,最高裁平成18年1月13日判決(貸金業者シティズ)以前は,大多数の下級審判決や学説が,期限の利益喪失特約下の支払いというだけでは,支払いの任意性を否定することはできないという見解に立っていたとした上で,「期限の利益喪失特約下の支払の受領というだけでは悪意の受益者とは認められないのであるから,制限超過部分の支払について,それ以外の同項の適用要件の充足の有無,充足しない適用要件がある場合は,その適用要件との関係で上告人が悪意の受益者であると推定されるか否か等について検討しなければ,上告人が悪意の受益者であるか否かの判断ができない。」と述べた。
(2) 最高裁平成21年7月10日判決,同月14日判決も,いずれも「やむを得ないといえる特段の事情」(悪意でないこと)の立証責任を貸金業者に負担させていることは同様で,最高裁平成19年7月13日,同月17日判決を変更したり,貸金業者の特段の事情の立証を軽減するものではない。ただ,貸金業者に悪意の推定を及ぼすためには,期限の利益喪失特約が存在するので,みなし弁済が成立する可能性がなく,悪意と主張するだけでは足りず,追加して他にもみなし弁済規定の適用が否定される事実があることを指摘しなければならないことを判示したのである。
(3) 結局のところ,貸金業者は,悪意の受益者と推定されないために,前記特段の事情を主張・立証しなければならないということに変わりはない。


4 善意の受益者の(独断の事情の)立証とその立証の程度
(1) 立証の程度
ア 貸金業者が悪意の受益者であることを否定したときは,貸金業者は,当該事案における個々の弁済それぞれに関し,みなし弁済が成立するとの認識を有していたこと及びそのように認識するに至ったことについて,やむを得なかったといえる特段の事情があったことを具体的に立証する必要がある。
イ この場合,主張・立証しなければならない特段の事情は,みなし弁済が成立すると認識したことがやむを得ないといえるだけの事情であるから,実質的には,みなし弁済の立証と同等程度の主張・立証が必要となる。
ウ 貸金業者としては,まず,みなし弁済の適用要件を充足するかどうかの判断に耐えうるだけの具体的事実が存在することを主張・立証しなければならない。実際には,当該金銭消費貸借取引において個々の貸付の際に法定の記載要件を充足した契約書面(17条書面)を遅滞なく交付した事実や個々の弁済時に直ちに受取証書(18条書面)を交付した事実などを個別具体的に主張・立証しなければならない。
(2) 立証方法として提出すべき17条書面・18条書面
ア この点,貸金業者は,往々にして,借り手がATMを利用して借入れや返済を行った際に交付したとする書面のサンプルを証拠として提出して,17条書面・18条書面を交付したことの立証に代え,善意であると主張する。
イ しかし,書面のサンプルを提出するに過ぎないような場合は,当該事案における個々の貸付けの際に契約内容を明らかにする書面(17条書面)を遅滞なく交付した事実や個々の弁済の際に直ちに受取証書(18条書面)を交付した事実を立証したことにはならない。結局,貸金業者がみなし弁済が成立するとの認識を有していたとする根拠が全く示されないわけで,貸金業者は悪意の受益者と認定される。
ウ また,訴訟に至ってから,新たにプリントアウトしたATM伝票(領収書兼お取引明細書」等)を書証として提出し,17条書面・18条書面を交付したことを立証しようとする貸金業者がある。
エ しかし,ATM機から17条書面・18条書面が交付された事実は,ATM機の内部に設置保管された巻紙状のジャーナル(記録紙)によって証明しなければならない。
オ ATM機にATMカードを挿入すると,ATMカードとATM伝票,ジャーナルの3点が密着する構造となっている。ジャーナルは,ノーカーボン紙(感圧紙)となっているので,ATMカードの凸状になったカード番号がジャーナルに圧力転写される構造になっている。また,取引明細(弁済金額,貸付け金額等)もプリンターによって印字されることで,交付されるATM伝票とジャーナルには同じ内容が記載される。こうして,ジャーナルにATMカード番号と取引内容が圧力転写・印字されてATM機内に保管され,これによりATMカードの所持者に17条書面・18条書面を交付した事実が確認できるのである。
カ しかし,被告CFJは,17条書面及び18条書面を提出しておらず,悪意の受益者と認定される


5 行政解釈及び行政指導等との関係について
(1) 貸金業者は,金融庁の行政解釈,事務ガイドライン及び行政指導に従っていること,また,みなし弁済規定の適用を否定する判決がなかったことあるいは結論の異なる判決があったこと,さらに,学説の状況の変遷について主張・立証することがある。
(2) しかし,書面要件,交付要件等条文上客観的・一義的に明らかな要件について,条文と異なった解釈が存在したこと等をもって,善意であったと言い逃れることはできない。
(3) 東京高裁平成22年2月4日判決(貸金業者プロミス)は,「いわゆる17条書面及び18条書面の交付の有無は,法令の明文の規定の解釈問題であり」「現在からみれば誤った解釈に基づいて行動していた場合に,それを止むを得ないとするには,少なくとも,控訴人の主張に一致する解釈が通説とされていて,これと異なる解釈をすることを期待することができなかったというような事情が必要である」とし,明文上求められている記載条件を欠けば,「到底,17条書面とは認められない」ことから,みなし弁済規定の適用があるとの認識を有するに至ったことにつき,やむを得ないといえる特段の事情は存在しないと判示した。


6 被告CFJに「特段の事情」が存在しないこと
(1) 銀行振込による返済のときの18条書面の交付の有無と時期について
銀行振込で返済したときに18条書面を交付していないことが殆どである。貸金業者が銀行からの振込返済のときに,18条書面を郵送した事実を立証できないのであれば,貸金業者の組織体制として,振込返済の場合には18条書面を郵送していなかったといえる。この場合,みなし弁済の成立要件を充足する貸金業者の社内体制を整えていなかったのであるから,貸金業者には,みなし弁済が成立すると信じた「特段の事情」は存在しないことになる。
(2) 17条書面の返済期間及び返済回数の記載
当初貸付時に交付される基本契約書には,「返済期間及び返済回数」(旧貸金業法17条1項6号)の記載がない。
また,個別貸付時にATM機から交付される書面にも,「返済期間及び返済回数」の記載がない場合が多い。
名古屋高裁平成8年10月23日判決(貸金業者武富士,簡裁上告判決,判例時報1600号103ページ)も,個別貸付時に交付される17条書面に返済期間・返済回数の記入がないことから,みなし弁済の成立を否定した。「返済期間及び返済回数」の記載は,旧貸金業法17条1項6号で記載すべきことは明確に規定されている以上,その記載がなければ,みなし弁済が成立する余地はない。
(3) ATM機による返済
近時のATM機では,弁済金の元本・利息の充当関係は表示されるが,貸金業者が指定した元本・利息の充当内容で合意するしかないかの選択肢しかなく,借主側から充当方法を指定することが不可能である以上,任意の弁済とすることはできない。


7 本件(被告CFJ)について

被告CFJは,原告に対して,17条書面及び18条書面を交付したことを主張・立証しない。単に,体制を整えていたと主張するのみである。
従って,被告CFJが悪意の受益者であるとの推定を覆すことはできず,悪意の受益者と認定される。


第6 原告の主張(その2)-被告CFJとの取引が一連のものであること
1 基本契約が1個の場合(本件の場合)

(1) 基本契約とは,借入れの限度額の範囲で,借入れと返済を繰り返すことができる契約のことをいう。
(2) 最高裁平成19年6月7日判決(貸金業者オリコ,判例タイムズ1248号113ページ)
同判決は,借入金額,返済方法,返済金額,利息の計算方法が定められた基本契約が締結されている場合には,借入限度枠の範囲で繰り返し借入れをすることができ,弁済は,借入金全体に対して行われるものであり,基本契約は「弁済当時他の借入金債務が存在しないときでもその後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含んでいる」と判示した。
同判決は,実質的に全ての貸金業者の基本契約に過払金充当合意を読み込むもので,その合意の存在を極めて広範囲に認めたものといえる。
従って,本件被告CFJの場合でも,約定完済後,再度借入れをする時点で基本契約書が作成されていないことから,一連充当計算できる。
なお,本件のように,貸金業者が,第1取引と第2取引の分断を主張するものの,第2取引開始時に新たに基本契約書が作成されたことの立証がなく,一連計算を認めた判例が次のとおり多数存在する。
洲本簡裁平成20年5月23日判決
熊本地裁玉名支部平成20年7月2日判決
唐津簡裁平成21年2月17日判決
東京簡裁平成21年3月27日判決
久留米簡裁平成21年8月20日判決
名古屋簡裁平成21年9月11日判決


2 基本契約書が複数存在するとき(予備的主張)
仮に,本件において,第2取引において,基本契約書が作成されていたことを被告CFJが主張・立証した場合に備えて,主張する。
(1) 約定完済後,第2取引の開始時に新たな基本契約書が作成された場合であっても,それが従前契約が継続していることを前提とした契約の「切換え」「更新」「貸付条件の一部変更」であれば,法律上1個の連続した貸付取引である。
  切換えとは,取引が継続している途中で,従前契約を終了させずに貸付限度額,利率等の金銭消費貸借契約の条件の変更を行うことと定義しうる。取引に空白期間がない「借増し」「借換え」が契約の切替えの一般的形態であるが,取引に空白期間があっても,「切換え」等の場合がある。
切換えであるといえるためには,まず,「基本契約1に基づく取引に係る債務の最後の弁済の際や,本件契約締結の際に,本件基本契約1が合意解除された形跡が伺われない」(福岡高裁平成20年7月9日判決),あるいは第1取引の「完済時も,その後も継続的包括金銭消費貸借契約を終了させる意思表示をしたことはなく,被告からも契約終了の意思表示はなかった」(那覇簡裁平成21年7月14日判決)場合がある。
次に形式的には,2個の基本契約が締結されているが,第2取引の基本契約書の作成は,第1取引開始時に締結した基本契約の継続中に利率や限度額等の契約条件が変更になっただけであり,1個の連続した金銭消費貸借取引である場合には,一連の連続した取引である。同旨の判例として次のものがある。
岡山地裁津山支部平成21年12月17日判決
熊本簡裁平成21年8月28日判決
大阪高裁平成21年12月17日判決
なお,「切換え」という表現ではなく,「契約の変更」(那覇簡裁平成21年3月12日判決),「契約書の書替え」(東京高裁平成20年9月8日判決),「契約内容の一部変更」(東京簡裁平成21年4月13日判決)とする判例もある。
(2) 最高裁平成21年1月18日判決(貸金業者クオークローン,判例タイムズ12645号115ページ)の判断を基礎とした反論(予備的反論,基本契約が2個以上ある場合)
同判決の要旨は,次のとおりである。
「第1の基本契約に基づく貸付け及び弁済が反復継続して行われた期間の長さやこれに基づく最終の弁済から第2の基本契約に基づく最初の貸付けまでの期間,第1の基本契約についての契約書の返還の有無,借入れ等に際し使用されるカードが発行されている場合にはその失効手続の有無,第1の基本契約に基づく最終の弁済から第2の基本契約が締結されるまでの間における貸主と借主との接触の状況,第2の基本契約が締結されるに至る経緯,第1と第2の各基本契約における利率等の契約条件の異同等の事情を考慮して,第1の基本契約に基づく債務が完済されてもこれが終了せず,第1の基本契約に基づく取引と第2の基本契約に基づく取引とが事実上1個の連続した貸付取引であると評価することができる場合には,上記合意が存在するものと解するのが相当である。」
同判決は,特段の事情の例として,次の要件を挙げる。
(a) 第1の基本契約に基づく貸付け及び弁済が反復継続して行われた期間の長さやこれに基づく最終の弁済から第2の基本契約に基づく最初の貸付けまでの期間
(b) 契約書の返還
(c) ATMカードの失効手続
(d) 利率の異同
(e) 空白期間の接触状況
(f) 完済と約定取引終了の意思表示
それぞれの要件について検討する。
ア 第1の基本契約に基づく貸付け及び弁済が反復継続して行われた期間の長さやこれに基づく最終の弁済から第2の基本契約に基づく最初の貸付けまでの期間について
本件の場合には,第1の基本契約に基づいて,平成13年12月8日から平成18年3月31日までの約4年3か月という長期にわたって貸付と弁済が繰り返され,その僅か5か月後である平成18年8月27日に,再度貸付がなされている。
イ 契約書の返還について
本件では,原告は,被告CFJから契約書の返還を受けていない。
契約書を返還したことは,貸金業者側に立証責任がある。貸金業者は,借り手に契約書を返還するときは,通常,受領書を徴収するか,契約書の控えにその返還を受けた旨の署名または押印を受ける。貸金業者が借り手の署名等によって契約書の返還の事実を立証しなければ,基本契約書の返還はないものと推認される(同旨,岡山簡裁平成21年7月15日判決)。
本件においても,原告は,被告CFJから第1取引の契約書の返還を受けた事実はない。
ウ ATMカードの失効手続
ATMカードの失効手続は,貸金業者側の内部処理の問題であり,外形的には,判断できない。従って,ATMカードの失効手続の有無も貸金業者側に証明責任がある。
ATMカードの所有権が貸金業者にあるところ,あえてATMカードを回収しない以上,ATMカードの利用は可能(有効)で合ったと推認される。
エ 利率の異同
利率については,取引が継続して借り手の信用が高まれば貸金業者側から利率を下げること,法改正の結果としても変化することなど,事実上1個の連続した貸付取引であるかどうかの基準とならないことがある。
本件では,利率に関して,2個の取引であると認められる事情は存在しない。
オ 空白期間の接触状況
本件では,不明である。原告は,多数の貸金業者との間に金銭貸借関係があったことから,被告CFJとの接触があったか否か不明である。
カ 完済と約定取引終了の意思表示
原告及び被告CFJは,原告が約定利率に従って貸付金を完済した際に,基本契約の解約を申し出ていない。
キ 結論
このような事情からは,同判決に照らした場合,本件は明らかに,「第1基本契約に基づく取引と第2の基本契約に基づく取引とが事実上1個の連続した貸付取引であると評価することが出来る場合」であって,「第1の基本契約に基づく取引により発生した過払金を新たな借入金債務に充当する旨の合意」が存在するものと解される事案である。
(3) 被告CFJに対して,一連計算を認めた判決
被告CFJに対して,一連計算を認めた判決には,次のものがある。
【高等裁判所判決】
①東京高裁平成21年12月17日判決(空白期間約1年8月)
【地方裁判所判決】
②大阪地裁平成16年12月22日判決(空白期間約5年)
③東京地裁平成18年2月27日判決(空白期間約2月)
④松山地裁西条支部平成19年5月31日判決(空白期間約1年)
⑤長崎地裁五島支部平成19年8月8日判決(空白期間約1月)
⑥神戸地裁平成19年9月7日判決(空白期間約3月)
⑦佐賀地裁平成19年9月28日判決(空白期間約1年6月)
⑦さいたま地裁平成19年10月26日(空白期間約3年5月)
⑧佐賀地裁唐津支部平成19年11月9日判決(空白期間約1年)
⑨横浜地裁平成20年1月24日判決(空白期間約6年9月)
⑩水戸地裁麻生支部平成20年3月25日判決(空白期間約1年6月)
⑪神戸地裁姫路支部平成20年3月25日判決(空白期間約10月)
⑫松山地裁今治支部平成21年11月12日判決(空白期間約9月)
⑬福井地裁平成21年12月22日判決(空白期間約4年3月)
3 よって,原告・被告CFJ間の取引は,一連の取引である。

第7 「第6 和解提案」について
原告は,訴状の記載の請求の趣旨の内容でなければ,和解には応じない。
被告CFJに不当な利得及びこれにより生じた利息を得させる合理的な理由はない。



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ワンポイント判例
不当利得として特定物を受け取った者が占有をすでに他に移転した場合は、これを同人が取り戻すことの可能なときに限り、原物返還の義務を負う。(大判昭16・10・25民集20-1313)

   

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