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今は,経済的破綻に陥り,会社更生手続き中の武富士が,開催更生手続き開始決定日9月28日の前日に出してきた準備書面を公開します。

今となっては,殆ど実務に役立つことはないと思われますが,
破綻前日の武富士の担当者の特攻隊的精神に敬意を表し,大量54頁に亘る大論文を公開します。

ブログでは,一度の公開することは困難でしたので,数回に分けて公開しれているものです。ます。

また,表については,ブログに乗せるのが困難なので,lこれも平打ちします。
ですから,もとの表の形式からは崩れています。

もっとも,内容的には,アイフルの準備書面を体よく纏めたに過ぎず,内容としては,新たなものはありません。

ただ,これまでの諸費者金融に対する闘いの歴史をよく纏めているので,参考になると思います。

また,大阪の弁護士がワープロ手打ちによって,公開するため,誤字脱字,変換ミスは,ご容赦ください。

平成22年(ワ)第○○○号 不当利得返還請求事件
原 告 甲
被 告 株式会社武富士

第3準備書面

平成22年9月27日

奈良地方裁判所葛城支部民事3A係御中

被告株式会社武富士
代表者代表取締役 清川 昭

第1.被告が悪意の受益者ではないことの主張
平成21年11月以降、訴訟件数が急激に増加し、また今日に至るまで高止まりの状態が続くとともに、業界全体として経営環境が逼迫している状況は周知のとおりである。そのようななか、訴訟事件において、被告の事務手続きが不十分であったことがあげられ、このことについては、真摯に受け止めるとともに、深く反省をした。
このたび、必要かつ適正な事務手続きができる準備が整った。
被告武富士は、民法704条悪意の受益者であることを従前から否認していたが、今後は単に否認するのではなく、善意であることを積極的に主張、立証していく。今回は、被告武富士が現在に至るまで43条みなし弁済の適用を受けるべく、貸金業規制法に則り、取り組んできた経緯を主張する。(別紙参照)

以上

                 1

「別紙」
武富士の見解について

目次
第1 はじめに………3
第2 被告の企業理念及び法令遵守態勢………4
1 被告における企業理念と新たな消費者金融システム………4
2 金利引き下げに向けて………4
3 貸金業法制定に至るまでの消費者金融における貸付利率の考え方………4
(1) 利息制限法制定当時における立法者の考え方………4
(2) 貸金業法制定当時における金利に関する議論………5
(3) 小括………6
4 消費者金融における被告の尽力………6
5 企業理念に基づく社員教育 ………7
6 貸金業法施行にあたって………7
第3 みなし弁済が成立すると認識するに至った「特段の事情」………7
1 「特段の事情」を要求する最高裁判決も,みなし弁済の成立要件について変遷があることを前提としていること………7
2 貸金業法立法直後の状況(昭和58年から平成2年まで)………9
(1) はじめに………9
(2) 立法者の見解………9
(3) 大蔵省の見解………12
(4) 裁判所の見解………15
(5) 簡裁判事の見解………16

                  −1−


(6) マスコミの見解………16
3 平成2年1月22日最高裁判決以降平成16年2月20日最高裁判決まで………17(1) 平成2年判決の判示内容………17
(2) 下級審判決………18
(3) 大蔵省・学説・実務家の解釈………23
4 平成16年2月20日最高裁判決以降,平成18年1月13日最高裁判決まで………25
(1) 17条書面について………25
(2) 任意性要件について………27
5 平成18年1月13日最高裁判決以降………28
6 貸金業法をめぐる法解釈・裁判例の整理………29
7 「悪意の受益者」を否定した裁判例………29
第4 被告対応−みなし弁済を成立させるための書面整備と任意性の確保………30
1 17条書面の要件の文責と被告の認識・努力………30
2 18条要件の充足とその認識………34
3 任意性………36
4 まとめ………40
第5 今後の過払金の返還について………40
別表………42
表1(利息制限法制定当時における立法者の考え方)………42
表2(貸金業法制定当時における金利に関する議論:立法者)………44
表3(貸金業法制定当時における金利に関する議論:大蔵省)………46
表4(貸金業法制定当時における金利に関する議論:日弁連)………48
表5(貸金業法制定当時における金利に関する議論:実務家・学者)………49
表6(貸金業法制定当時における金利に関する議論:マスコミ・その他)………51

                 −2− 

第1 はじめに

被告は、昭和41年の創業以来、企業理念である「お客様第一主義」に則り、名実共に「お客様に愛され親しまれる企業」を目指し続けてきた。創業当時、同業他社がお客様をぞんざいに扱い、貸してやる的態度で、文字通り「高利貸し」的対応をする中、被告にあっては来店されたお客様には「いらっしゃいませ」、御利用頂いたお客様には筋りがとうございました」と頭を下げ、商売人としての基本を忘れずに経営を続けてきた。
当時、被告を訪問した伺業社からは、斌井さん、そんなことをやってるとお客になめられるよ。jと言われることもあったが、創業者は、「お客様あっての武富士」の信念の下、お客様をお客様として取り扱うという姿勢を崩さなかった。そのような姿勢はお客様から感謝され、盆暮れにはたくさんのお中元・お歳暮が当社に届くという形となって現れた。
当初の営業形態はf団地金融」、ガリ版刷りしたチラシを団地に配布し、電話を頂いたお客様宅を訪問して5千円から1万円をご融資するという方法であった。その後、創業者を含む経営陣のアメリカへの研修旅行を経て、同業他社に先立って、お客様に来店して頂く営業形態を導入し、現在一般に行われている消費者金融業の先駆けとなった。
担保や保証人がなければ融資をしないという金03TJ機関や質草がなければ融資をしないという質屋業に対して、申し込みすらできない多くの国民の皆様に無担保無保証による融資の道を提供するという新しい金融形態は、数多くのお客様からご愛顧を頂き、被告を御利用頂いたお客様の数は延べ800万人を超え、平成1◎年i2.月には東京証券取引所一部上場を果たすことができるなど、社会のお役に立てたのではないかと考えている。
確かに、昭和40年〜50年代の高度成長期に業界が倍hゲームを続けた時期、当業界が様々な波紋を社会に投げかけたことは否定しない。「高金利」,「過剰融資jr苛酷な取立て⊥の3K.は当業界の反省すべきところであったと考える。その結果として、「貸金業の取締まり等に関する法律」が昭和58年11月1日に施行され、当業界に対する様々な規制が課されると同時に、利息制限法を超える金利帯での営業を認めて頂くこととなった。ただし、上限金利は段階的に40.004%まで引き下げることも併せて決められた。
ところで、別紙三にあるように取り立て行為の規制に関する貸金業規制法第21条及び大蔵省銀行局長通達の内容は当社の規則を基本として作成されたものである。すなわち法律のない昭和51年から被告が「管理禁止事項」と題して取立てに関する規則を自主的に作成し、.社内的に徹底してきた実績が評価された結果であった。このように、遵法精神という面においても被告は業界の先駆けとしての使命を認識し、契約書や申込票の内容等についても逐次監督官庁に事前相談し、了承を得た上で実際の業務に使用するという姿勢をとってきたのである。また、その後の数度にわたる貸金業規制法の改正に関しても、常に監督官庁の指示・指導の下で、法に則った業務が行われるようhな業務見直しを実施し、今日に至っている。
そして、被告としては、常に貸金業法第43条の適用要件を充たしているとの確信を持って業務を行ってきた。しかしながら、現実の過払金請求に係る裁判においては、「悪意の受益者」であることを前提とした判断が多くなされている。そこで、被告は、これ.まで「善意」に関する主張立証が十分でなかったとの反省に立ち、今後、可能な限り、被告における業務の正当性につき主張立証を尽くしていく所存である。
本件においても、被告における「顧客の利益保護」を前提にした企業理念に基づく法令遵守体制について主張立証し、その上で、原告との各取引における個別事情に基づき、被告が「悪意の受益者」ではないことを主張立証する(以下「第3みなし弁済が成立すると認識するに至った「特段の事情」」)。
被告はみなし弁済が成立するとの認識を有しており、その認識を有するに至ったことにっきやむを得ないといえる特段の事情があるのである(最高裁判所平成19年7月!3日判決(民集6i巻5号1980頁、以下「平成19年判決」という。)。

                −3−



第2 被告の企業理念及び法令遵守体制

1 被告における企業理念と新たな消費者金融システム

社会の大多数を占める庶民にとって、小口の現金が足りない局面は少なからず訪れる。
従来、そうした小口の資金需要に対しては、質屋に見られるような動産担保付の融資が主流であった。戦前には一部の銀行が消費者金融に乗り出したこともあったが、戦後は銀行の機能を産業復興のための企業向け融資に集中させる政策が採られたため、経済の高度成長に伴う小口の資金需要が増す中であっても、銀行が小口の消費者金融機能を担うことはなかった。

被告は、このような資金需要に応えるべく、被告の創業の精神である「庶民金融の理想を追求し、その限界に挑戦する」を踏まえて、企業が行動すべき企業理念として「存在理念:ゆとりある暮らしを支援し、信頼される企業市民を目指す。」、「経営理念:効率経営による適正利益を追求し、永続的発展を目指す。」、「行動理念:お客様に愛され、社員とともに社会との共存共栄を目指ず。」を掲げ、債権者と債務者は常に対等な立場にあることを前提に、顧客にとって有利かつ便利な商品を提供するという精神から、新たな消費者金融システムを開発した。これは、@無担保、A日歩計算(それまでの慣習だった暦月計算かつ前払いを廃止し、利用した日数のみの日歩計算かっ後払いと.した)、B極度契約(極度契約に基づくリボルビングシステムを開発した)、C自由返済(返済の金額・期間・回数のいずれも随時・随意に変更でき、借入も与信枠内であれば随時・随意に可能とした)を内容とする画期的な金融システムであり、これが、極度契約を締結し、必要時にその都度貸付けを行い、随意額の返済を行うという現在のリボルビング方式契約の先駆けとなったのである。

2 金利引き下げに向けて

被告は、昭和41年から現在まで出資法上限金利を大幅に下回る金利で営業を行っている。別紙2は、大手および準大手貸金業者の貸付上限金利の推移である。一目瞭然であるが、被告は、出資法」二限にほど近い金利で消費者に対する貸付けを行うi業者が多勢を占める中、企業理念の下、自主的に率先して金利の引き下げを行い、実質的に業界全体の金利引き下げに寄与してきたのである。

3 貸金業法制定に至るまでの消費者金融における貸付利率の考え方

最近の過払金請求訴訟においては、利息制限法上限金利よりも高いことを指して、「極めて高金利での貸付け」との表現がなされることがある。しかしながら、昭和29年の利息制限法制定時も昭和58年の貸金業法1制定時も、無担保貸付を中心とした貸倒れリスクの高い層をも対象とする消費者金融において、利息制限法上限利率以下での貸付けは想定されていなかった。立法者、大蔵省、日弁連、実務家はもちろん、マスコミに至るまで、皆、利息制限法上限利率を超える貸付けを前提とした議論をしていたのである。
これらの点にっき、以下のとおり順次検証したい。

(1)利息制限法制定当時における立法者の考え方
別表表1に示すとおり、立法者は、貸金業者が利息制限法上限利率以下で営業することを想定していたわけではなく、単に裁判上請求する場合の限度額とし

────────────────────────────────────────
1)以下「貸金業の規制等に関する法律」を「貸金業淘という。ただし引用元の原文にf貸金業規制法」
等、別途の記載がある場合はそちらに従う0

                 −4−

て利息制限法上限利率を捉えていた。貸金業者の多くが利息制限法上限利率を超過して貸付をしていることを認識した上で、金利が日歩30銭(年利109.5%)を超えるものについては、利息制限法案と同時に審議されていた出資法により刑事罰を課すことで規制し、利息制限法上限利率を超えた部分については利息制限法により裁判上講求できないとの網をかぶせるという「三般構え」の規制を予定していたのであり、利息制限法上限利率以下での営業を強制する趣旨ではなかったのである。
(2)貸金業法制定当時における金利に関する議論
ア立法者
別表 表2にみる立法者の発言によれば、当時の貸金業者の貸付利息は年利70%ないし80%に至っていた揚合も多かったことから、年利40%まで段階的に下げさせることにより、金利に関する問題を最終的に解決させることを目的としていたことが認められる。また、貸金業者に対して、非常に厳しい意見を持っていた関西大学の上田昭三教授が、貸金業者のコスト等を踏まえて独自に計算した結果、貸金業者の適正金利は、年利30.9%が妥当であるとの意見を表明している。
ここで着目すべきは、貸金業者における貸出利率を、利息制限法の上限金利にまで下げさせなければならないとは、誰も言っていないことである。
上田教授の見解が、最も低い金利を示しているが、この金利でさえ年利30.9%であり、利息制限法の制限利率を超えたところで議論がなされていたのである。
イ大蔵省
別表表3に示すとおり、貸金業法の所管官庁である大蔵省は、当時の貸金業者は利息制限法上限利率を超える金利で営業をすることが一般的であることを認識した上で、年利40.004%の貸付金利を債務者保護の観点から妥i当な金利水準であると捉えていた。
また、別紙1表3記載のうち、法43条の立法趣旨にっいて「個別に不安定な状態冒におかれることを避ける」とある点は、貸金業者が、利息制限法上限利率を超える金利を収受することを当然の前提としており、その上で過払金として返選を求められる事態を避けるという意味であり、貸金業法制定後も、貸金業者が利息制限法上限利率を超える金利を収受することを、例外的なものとして捉えるのではなく、むしろ原則的なものと捉えていたのである。
ウ日弁連
別表表4に示すとおり、日弁連も、貸金業法制定当時は、貸金業者の適正利率を年利36.5%として主張していた。日弁連でさえ、利息制限法上限利率を超過する利率での営業を当然視していたのである。
エ実務家・学者
別表表5に示すとおり、貸金業者に厳しい立場を取っていた上田教授でさえ、貸金業者の適正金利を、貸付金額50万円未満の小Qの貸金を年利36%、それ以上の大口の貸金について、年利23%と、いずれも利息制限法上限利率を超える金利を主張している。貸金業者が利息制限法上限利率を超える金利を収受することは前提としながら、特に高利を収受する貸金業者につき規制すべきとの立場だったのである。

                   −5−

みなし弁済が成立すると認識するに至った「特段の事情」とは何を指すのかにつき判断した平成19年7月13日最高裁判決(平成18年(受)276号)は、振込みによる弁済時に18条書面を交付していなかった事案にっき、平成11年1月2旧最高裁判決(以下「平成n年判決」という。)に照らすと同取扱いがみなし弁済の成立要件を満たさないことは明ら



また、貸金業法を批判していた木村達也弁護士でさえも、貸付金利が年利
40.004%になれば、貸金業界が健全な消費者産業に移行すると主張していたのであって、利息制限法上限利率を超えるか否かは特段問題視していない。
さらに、篠原日大教授の論文によれば、当時、銀行等ではないほとんどの貸金業者は、低コストで資金を調達する術がなかったことから利息制限法上限利率を超過した利率で営業を行っていたと分析しており、利息制限法上限利率以下での営業は想定できないことを示唆しているし、甲斐大阪市大教授の論文によれば、大蔵省は、昭和29年時点において、日歩30銭(年利109.5%)の貸金業者の存在を認めており、昭和43年判決が出された後においても年利109.5%までの貸金業者の存在を認めてきたという歴史があること、借主側の主張における貸金業者の適正金利の目標が36%、すなわち利息制限法上限利率を超える利息であったことが認められるのである。

オ マスコミ・その他

別表表6に示すとおり、いわゆるグレーゾーンの上限金利、すなわち出資法の上限金利に関しては、国会で議論がまとまらず長年紛糾しており、貸金業法を所管する予定であった大蔵省は当初年1095%の半分程度を考えていたところを〜年利40%でまとめあげたという経緯がある。貸金業法案及び出資法改正案に反対した社会党、共産党でさえも、36,5%という数字で議論していたのであり、貸金業者が利息制限法上限利率で営業をすることを想定していたことは微塵もうかがわれない。新聞記者や消費者団体の委員も、年利約40%との点については評価をしており、国の行政機関であった経済企画庁(当時)も、利息制限法の制限利率を大幅に超過した年利365%から54.75%という金利を、金利が低いとして一定の目安としている。
また、朝日新聞の論説委員も、金融問題研究会による利息制限法の上限利率をあげるという趣旨の提言に賛同している。
つまり、厳しい貸金業法批判の中でも、金利を40〜50%に抑えるべきであるとか、無担保の個入貸付は金利30%にすべきであるといった内容が主張されていたのである。

(3)小括
以上のとおり、貸金業者の貸出金利を利息制限法上限利率にまで引き下げるべきであるというような主張は、被告の知る限り見られなかった。貸金業者の貸出金利が利息制限法上限利率を超えることは当然の前提であってこの点は誰も問題視しておらず、むしろ、貸金業者の調達金利等のコストや個人向け無担保貸付のリスク等を踏まえて、年利40%が妥当な金利であると社会全体が考えていたのである。
上記のような議論を経て昭和58年に貸金業法が制定された後、出資法上限金利が4回にわたり引き下げられ、いわゆるグレーゾ,_._..ンの幅が徐々に狭められているが、これもまた、利息制限法超過金利の収受を前提にしている。利息制限法上限利率を超tる利息の収受を禁止するという目的での改正は平成18年改正になって初めて行われたのであり、それすら未だ施行されていない。

4 消費者金融における被告の尽力

創業当時より、顧客の利益を第一に考え、法令遵守を目指してきた被告は、社内だけにとどまらず、業界全体、社会全体へその企業理念の徹底を図り、市場の健全・発展を

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願ってきた。当時の貸金業は、「貸金業の自主規制の助長に関する法律」(昭和47年公布)によって、業界の自助努力に委ねられていた。
その中で、被告は、一部の悪質業者により消費者の利益保護がないがしろにされている状況を改善すべく、行政による規制の早期実現に向けた活動に早くから取り組んでいた。

5 企業理念に基づく社員教育

被告は、創業以来社員教育に情熱を傾けてきた。年2回の「全国支店長会議」を恒例とし、検査内容優良者の発表を初めとした啓発活動を継続してきた。また、一般社員にいたる範囲で年に数十回の本社研修を実施し、創業者自らが陣頭指揮をとって社員教育にあたつてきた。いずれにおいても、企.・;念である。「規則厳守」rお客様第一主義」
を基本として、消費者の利益を保護しっっ、「お客様に愛され、親しまれる企業作り」
を目指すものであった。

6 貸金業法施行にあたって

昭和58年ロ月1目に施行された貸金業規制法第21条および関係省令並びに銀行局長通達と被告が昭和5!年から独自に制定し遵守してきた「管理禁止事項」を比較したものが、別紙1であるが、両者は酷似している事が判る。これは、被告が貸金業規制法制定前から「お客様第一主義」の名の下に、同業他社に先駆け顧客利益の保護に注力してきた結果として、被告固有の取立て行為に関する制限事項が通達の形をとりつつも行政に任用された事を意味する。かかる企業は当時被告以外には存在しなかったのであって、遵法姿勢面においても、文字通り業界のリーディングカンパニーであったことを裏付けるもめである。当然、法制定前には、被告の創業者に対して当時の大蔵省より様々な相談があったことは言うまでもなく、法施行後も、様hな面において監督官庁とは連絡を取り・ながら業界の健全化のために尽力してきたのである。

7 法令遵守の徹底

被告は、昭和58年の貸金業規制法施行前より、独自に「検査部」を設置し、各支店への臨店監査を実施してきた。歴代検査担当の責任者には、旧大蔵省出身者を招聴し、監督官庁の目で監査し、問題のある場合には懲戒処分を含め、厳しく対応してきた。また、1/成15年にはコンプライアンス統轄室を立ち上げて、貸金業に関するコンプライアンス知識の向上・徹底に努め、らラーニング」の導入など、「コンプライアンスオフィサー」
「個人情報保護オフィサーjr貸金業務取扱主任者」等各種資格の習得のため全社をあげて取り組んできた。そして、近年では「内部統制室」を設置して、社内規定並びにその執行状況を見直し、統〜した規定の下に全社員に遵法姿勢を徹底しているところである。

第3 みなし弁済が成立すると認識するに至った「特毅の事情j

1「特般の事情」を要求する最高裁判決も、みなし弁済の成立要件について変遷があることを前提としていること

みなし弁済が成立すると認識するに至った「特段の事情」とは何を指すのかにつき判断した平成19年7月13日最高裁判決(平成18年(受)276号)は、振込みによる弁済時に18条書面を交付していなかった事案にっき、平成11年1月2旧最高裁判決(以下「平成n年判決」という。)に照らすと同取扱いがみなし弁済の成立要件を満たさないことは明ら

                ―7―

かであると指摘した上で、「特段の事情」があるというためには、「平成11年判決以後、上記認識に一致する解釈を示す裁判例が相当数あったとか、上記認識に一致する解釈が有力であったというような合理的な根拠があって上記認識を有するに至ったことが必要である」と判示している。つまり、同判決は、最高裁により判断が示された\!成11年以後の取扱いについて特に指摘し、同判決と異なる解釈をとることについて合理的な根拠を求めているのであり、平成11年判決以前は「特段の事情」の判断が異なることを前提としているのである。

さらに,平成21年7月10日最高裁判決及びn月14日最高裁判決(以下両判決をf平成21年7月判決」という。)においても、期限の利益喪失特約の下で利息制限法超過利息を支払った場合、その支払いはみなし弁済の成立要件の一つである任意性を欠くと判断した平成18年1月13霞判決(以下「平成18年判決」という。)につき、同判決が出される前は、「貸金業者において、期限の利益喪失特約下であることから直ちに同項の適用が
否定されるものではないとの認識を有していたとしてもやむを得ないというぺきであ
り、貸金業者が上記認識を有していたことにっいては、平成19年判決の判示する特段の
事情があると認めるのが相当である。」と明確に判示されている。

この点は、「特段の事情」の認定にあたって非常に重要な点である。特段の事情は、当時の認識について問題とするのであるから、後に出された最高裁判例によれば当時もこのように解するのが当然であったという推論は働かない。むしろ、最高裁判例が出されたということは、それ以前は要件解釈に争いがあり、かっいずれの説も最高裁における判断を要するほど合理的な根拠を有するものであったといえるのである。

したがって、以下、被告がみなし弁済が成立すると認識するに至った合理的根拠にっき、最高裁判決・を境に以下のとおり4つの時期に分けた上で、立法当事者、監督庁、裁判所、実務家及びマスコミ等の当時の見解を整理して主張する。

時期
平成2年1月21日以前

みなし弁済の成立基準
・最高裁判所の判断なく詳細不明。
・包括契約には貸付の金額及び貸付の年月日の記載
不要(通達)。
・複数書面の交付をもって17条書面の交付といえる
(通達)。

                    −8−

平成2年1月22日から平成16年2月19日まで

最高裁判所の立揚は緩和説
「任意」とは、債務者が利息の契約に基づく利息又は賠償額の予定に基づく賠償金の支払いに充当されることを認識した上、自己の自由な意思によって支払ったことをいう(最高裁判決)。
基本契約には基本契約締結時に特定可能な事項のみ記載すれば足り、個別貸付時の交付書面と併せて17条書面の要件を満たせば足りる(裁判例)。
返済期間及び返済回数は、債務者が次回の利息金額及び元利充当額を容易に認識できれば、一義的な記載があったものといえる(裁判例)。
【平成11年1月21日最高裁判決以降】
振込による返済の場合、みなし弁済が認められるためには1特段の事情のない限り、貸金業者は、払込みを受けたことを確認した都度、直ちに、同法18条1項に規定する書面を交付しなければならない(最高裁判決)。

平成16年2月20日から平成王8年1月12日まで

法43条1項の規定の適用要件については、これを厳格に解釈すべきとの一般論(最高裁判決)。
返済期間及び返済回数の記載を要しない(高裁判決)。
貸付契約の性質上、確定的な記載が不可能な事項があっても記載義務を免れないが、当該事項に「準じた事項」を記載すれば、記載したものと解すべき(最高裁判決)。

平成18年1月13日以降

厳格説


2 貸金業法立法直後の状況(昭和58年から平成2年まで)

(1)はじめに
昭和58年11月1日に貸金業法が施行されて以来、貸金業法43条のみなし弁済に関する最高裁判決は、最高裁判所平成2年1月22日判決(民集44巻1号332頁、以下呼成2年判決」という。)に至るまで存在しなかった。それゆえ、みなし弁済の成否に関する貸金実務は、貸金業法施行以来、6年以上もの間、最高裁の判断なくして営まれてきた。その聞、貸金業者としては、貸金業法の立法趣旨を探り、あるいは監督庁の指導に従って業i務を行っており、最高裁が、みなし弁済の成否について初めて判断した平成2年判決においても、後述のとおり、それまで健全に貸金業を営んでいた貸金業者の実務を追認する形の判断が示されたのである。
そして、以下紹介する立法者の見解、貸金業法の制定から平成2年判決が下されるまでの監督庁の見解、下級審裁判例、簡裁判事の見解、実務家やマスコミの見解から明らかなとおり、被告における業務は、まさにこれらの認識に沿った正当なものであった。

(2)立法者の見解
以下のとおり、立法者としては、債務者の利益保護のための金利引き下げを実現するため、貸金業の経営安定を目指してみなし弁済を設けたのであり、貸金業法17条や18条の各記載事項の正確性等を厳格に解釈しなければならないとして、みなし弁済の成立を否定するようなことは想定していなかった。

                  ―9―


ア 賃金業法43条が制定された趣旨

大原一三自民党衆議院議員(貸金業法案の発議者)の発言
昭和57年8月19日参議院大蔵委員会会議録第15号9頁
「一方において登録を義務づけ、さらにまた非常に厳しい規制を、私、これやる前はちっとも気がっかなかったのでありますが、あたりまえのことが書いてあるんだと思ったら、そうじゃないということでありまして、受取証書も出さない、契約書も渡さない、返還の条件も書いてないというような、そういう混乱した業界に対して厳しいメスをこれから加えていくわけでございますので、行く行くは四〇%に持っていけばグレーゾーンの幅はなくなっていくわけでございますから、その間、現在の業界の1',t正と申しますか、行儀ろしくしていただくために、過渡期ではございますが、その条件の中でひとつ不安定な経営形態、経営状況がないように、裁判所へ持っていったら返してもらえるというような不安定な経営条件をやはりこの際、先ほどのいろいろの規制との交換条件でこの法律で排除を亘ζわけでございます。ただし、この揚合も、先生御指摘の任意とはなんぞやという事実認定のもんだいが,これは錯誤あるいはまた詐欺あるいは強制,何らかの形で自由な医師を妨害された場合は,これは争えるわけでございますし,更に先ほどの受領書にまた契約書の写しでございますとか,そういったものが交付されていない場合には,この任意ゾーンの適用はないんだというところまで,一応条件排除をしておりますので,そういった考えで,最高裁の判例を何と申しますか,解除したという規定になっておるわけでございます。」

大原一三自民党衆議院議員の発言
昭和58年4月27日参議院大倉委員会会議録第17号30頁
「43条の問題でありますけれども,これは,色々の法的規制を今までの規制のない状態から入れていく手前,やはりその身代わりとして,金利水準を漸次下げていくということ,その身代わりとして43条の規定を入れたわけでございます。」

大原一三自民党衆議院議員の発言
昭和58年4月14日参議院大倉委員会会議録第11号13頁
「違法者に対しては業務停止,取消と,いままでにない厳しい規制がお粉wれる訳でありますので,そういう意味で実効金利がそういう高いものであれば,それを下げていく仮定で,鹿,お監督は非常に厳しいという条件の中でやっていくんでありますから,これに正直に従っていく業者,前部が前部悪いんじゃありませんから,これに従って態勢をこの法律に順応させいていこうという業者に対し

               −10−

て常に金利を不安定な状況にして返還請求ができるというのは,業界指導のこれからの体制の中で不適切ではないかという考え方でこの43条を設定したわけでございます。」

貸金業法制定以前は、国の機関が、貸金業者に対して統一的な監督をする体制は存在しておらず、また当時の貸金業者の貸付金利は、年73%超の業者が35%、年S4.75%超の業者が57%も存在していた(昭和57年8月19日参議院大蔵委員会会議録第]5号11頁)ことから、かなりの高金利の貸付けがなされていたという実態があった。
そこで、当時問題となっていた高金利・過剰貸付・苛酷な取立てに伴って生じた債務者の困窮という、いわゆるサラ金禍の問題を解消するために、貸金業法の制定により、貸金業を登録制にすることで貸金業者を大蔵省の監督下に置いた上で、種々め行為規制を貸金業者に課し、また出資法上の上限利率を年109,5%から、年73%・年54・75%、さらに年4.004%に順次引き下げることで、貸金業者の貸付利率を引き下げたのである。そして、種々の行為規制を貸金業者に課すことと引き換えに、貸金業者の経営安定化を目指して、43条のみなし弁済という概念を導入したという経緯がある。すなわち、43条は、債務者が最高裁昭和43年i!月13日判決(以下「昭和43年判決」という。)に基づき、支払済のいわゆるグレーゾーン金利の返還をいっでも事後的に請求できるということを認めると、:貸金業者の経営がますます不安定になってしまうことから、昭和43年判決の適用を排除したものなのである。

イ 立法者が想定していたみなし弁済が成立しない事態

大原一三自民党衆議院議員の発言
昭和58年3月3日参議院大倉委員会会議録第4号25頁
実効金利が七〇%以上というのは相当まだあるということですね。そういう状況の中で無理してそれを下げていくわけでございますから、そしてまた一方においては、いままでなかった行為規制、さらには幅の広い業務の取り消し、さらにまた登録の取り消しというところまでいっているわけでございますので、これはグレーゾーンは残るわけでございまして、なくなっちゃうわけではないんですね。たとえば肝心の契約書の書面の写,しを交付しなかった揚合とか、あるいはまた領収書の交付をしなかった場合とか、現制金利を超えて依然として貸し出しておる揚合等は、利息制限法を超える金利につきましては元本充当、そしてそれを超えれば返還請求ができる仕組みに一応はなっておるわけでございます。規制の方面と金利の引き下げということとの兼ね合いで、業界をできるだけ無理なくわれわれの志向するいわゆる秩序のあるそしてまた合理的りますので、そこら辺にひとつ配慮したというのがこの四十三条の規定でございます。ですから、四〇%になれば、弁護士会の方は排除してもよろしい、要するに最高裁判所の判例のよ

               −11−


うな考え方はなくてもよろしいと踏んでいらっ,しゃるんですが、それに比べると大分落ちますけれども、そこへ近づけていく過程において、申し上げましたように、血も出るわけでございますの至、そこら辺との兼ね合いで、本規定は必要ではなかろうかというのがわれわれの考えでございます。」


大原一三自民党衆議院議員の発言

前掲参議院大蔵委員会会議録第}5号9頁

「裁判所へ持っていったら返してもらえるというような不安定な経営条件をやはりこの際、先ほどのいろいろの規制との交換条件でこの法律でも、先生御指摘の任意とは何ぞやという事実認定の問題が、これは錯誤あるいはまた詐欺あるいは強制、何らかの形で自由な意思を妨害された場合は、これは争えるわけでございますし、さらに先ほどの受取証さらにまた契約書の写しでございますとか、そういったものが交付されてない場合には、この任意ゾーンの適用はないんだというところまで、一応条件排除をしておりますので、そういった考えで、最高裁の判例を何と申しますか、排除したという規定になっておるわけでございます。」

塩出啓典公明党衆議院議員(貸金業法案に反対した政党の議員)の発言

昭和58年3月3日参議院大蔵委員会会議録第4号25頁

「四十三条にいわゆる適用除外として、衆議院の段階で、契約書を交付しないとか領収書を発行しないとか、そういうような非常な悪徳というか、量ういう場合は四十三条は適用しないということを設けたのは大きな一歩前進だと思います。」


・立法者が想定していた、貸金業法43条のみなし弁済が成立しない場合とは、17条書面である契約書(写し)や18条書面である領収書を債務者に全く交付しない場合(銀行振り込みによる場合を除く)や、出資法上限金利を超えた金利の貸付けをした場合等のかなり極端な揚合に限られていたのであって、貸金業法里7条や18条の各記載事項の正確性等を厳格に解釈しなければならないとして、みなし弁済の成立を否定するようなことは想定していなかった。

(3) 大蔵省の見解
貸金業法施行後6年以上もみなし弁済の成否に関する最高裁判決がなされない問、貸金業実務を行っていた貸金業者が依拠することができ、また従うべきと考えられる解釈は、貸金業法を所管する大蔵省の解釈であった。大蔵省においても、以下のとおり貸金業法43条の立法趣旨について立法者と同様の理解をしていた。


大蔵省銀行局内貸金業関係法令研究会編「一閤一答貸金業規制法の角峯説」(昭和58年6月7日初版・120頁)

「貸金業規制法の制定は、まず法の入口において貸金業を営む不適格な者を排除する登録制度を導入し、登録業者については種々の業務規制を課してぐ債務者が自らどのくらいの債務を有しているかさえわかっていないケースも稀ではなかった従来の貸付けの仕方を改めさせる等の規制をしている。こうして行政庁の登録を受け、業務の仕方を規制され

               −12−


ながら営業を行なう貸金業者が、債務者の意思しだいで、利息制限法所定の金利を超過する部分について元本充当および返還請求権が認められるようでは、個々の取引がきわめて不安定な状態におかれ、書面の交付義務等の行為規制も実効あるものとなるか疑わしくr登録を受けずに貸金業を営むこと(いわゆるヤミ金融)が横行しないとも限らない。さらに貸金業規制法の施行とともに、出資法の刑罰金利が債務者保護の観点から妥当な金利水準まで引き下げられることでもあり、債務者が利息制限法所定の金利を超える部分を任意に支払った場合には、これを有効な利息の債務の弁済とみなすことが適当であると判断された。これが第四三条の立法趣旨である。」


同「一問一答貸金業規制法の解説」(130頁)

「(二)第四三条は、登録を受けた貸金業者のした貸付けの契約に基づく利息の支払についてだけ適用される条文である。したがって、附則第三条により従来の出資法第七条の届出をして営業していた貸金業者が、原則として一年間、未登録のままで営業が認められている経過期間中の貸付契約に基づく支払については、適用されない(附則第三条第二項)。
こうした業者には、第一七条および第一八条を含む業務の規制を受けながら、任意ゾーンの適用は受けないという期間が一時的にではあるが、存在することとなる(略)。任意ゾーンを創設する必要性が、単に第一七条及び第一八条の書面の交付の義務づけだけに求められるのではなく、行政庁が登録した業者の取引が個別に不安定な状態におかれることを避けるという目的もあり、こうした規定となったものである。」


大蔵省銀行局内貸金業関係法令研究会編「Q&A貸金業ハンドブック」(昭和61年7、月21日初版・146頁)
「規制法の制定は、まず法の入口において貸金業を営む不適格な者を排除する登録制度を導入し、登録業者については種々の業務規制を課して、債務者が自らどのくらいの債務を有しているかさえわかっていないケースも稀ではなかった従来の貸付けの仕方を改めさせる等の規制をしている。こうして行政庁の登録を受け、業務の仕方を規制されながら営業を行う貸金業者が、債務者の意思しだいで、利息制限法所定の金利を超過する部分について元本充当及び返還請求権が認められるものとすると個々の取引がきわめて不安定な状態におかれ、書面の交付義務等の行為規制も実効あるものとなるか疑わしくなり、ひいては、登録を受けずに貸金業を営むこと(いわゆるヤミ^0/;rrq)が横行しかねないとの懸念もある。そこで規制法の施行とともに、出資法の刑罰金利が債務者保護の観点から引き下げられることでもあり、債務者が利息制限法所定の金利を超える部分を任意に支払った場合には、これを有効な利

                  −13−



息の債務の弁済とみなすものとすることが適当であると判断された。これが法第43条の立法趣旨である。」


同「Q&A貸金業ハンドブック」(155頁)

「(2)法第43条は、登録を受けた貸金業者のした貸付けの契約に基づく利息の支払についてだけ適用される条文である。したがって、法附則第3条により従来の出資法第7条の届出をして営業していた貸金業者が、原則として1年聞、末登録のままで営業が認められている経過期間中の貸付契約に基づく支払については、適用されない(法附則第3条第2項)。
こうした業者には、法第17条及び法第18条を含む業務の規制を受けながら、任意ゾーンの適用は受けないという期間が一時的にではあるが、存在することとなる。任意ゾーンを創設する必要性が、単に法第17条及び法第18条の書面の交付の義務づけだけに求められるのではなく、行政庁が登録した業者の取引が個別に不安定な状態におかれることを避けるという目的もあり、こうした規定となったものである。」

ア 貸金業法43条の趣旨に関する大蔵省の見解

基本的に前述の立法者の見解と同様であるが、貸金業法の行為規制を実劾性あるものとするために、貸金業者に登録を促し、また、無登録貸金業者(ヤミ金融)の横行を防止するために、登録貸金業者が享受できる恩恵として貸金業法43条の規定が設けられたことが、より鮮明になっている。
さらに、「行政庁が登録した業者の取引が個別に不安定な状態におかれることを避けるという目的」、すなわち債務者が、昭和43年判決に基づきすでに弁済したいわゆるグレーゾーン金利相当額の返還を講求する事態を避けて、登録貸金業者の経営を安定させるという目的も存在していた。
大蔵省は、みなし弁済の成否について、後の平成16年判決のように厳格には解釈していなかったものと考えられる。

イ貸金業法18条書面に関する大蔵省の見解

同「一問一答貸金業規制法の角n説」(65頁)

「債務者(または第三者)による貸金業者への弁済が、債権者との契約等により貸金業者が金融機関に有する預金口座への払込みによって行なわれる揚合が多い。このような場合には、弁済者は金融機関から、当該貸金業者に対する払込みについて、元利金の区別はないが払込額全体の証明書は交付されるので、支払事実の有無についての証明を弁済者は所持することができる。したがってこのような場台には、弁済者からの請求があってはじめて、前述したような受敢証書の交付を貸金業者に義務づけることとしても、債務者等の保護に欠けるおそれがないものと判断」できる。

                 −14−


同「Q&A貸金業ハンドブック」(80頁)

債務者(または第三者)による貸金業者への弁済が,債権者との契約等により貸金業者が金融機関に有する預金口座への払込によって行われる場合が多い。このような場合には,弁済者は金融機関から,当該貸金業者に対する払込(自動振替も含む)について,元利金の区別はないが払込額全体の証明書は交付されるので,来事実の有無についての証明を弁済者は所持することができる。従って,このような場合には,弁済者からの請求があって初めて,前述したような受取証書の交付を貸金業者に義務づけることとしても,債務者等の保護にかけるおそれがないものと判断」できる。


大蔵省は,預金口座への払込による弁済の場合には,弁済者は支払事実の有無について金融機関からの証明によって証拠を保持できることを理由に,弁済者の請求がない限り,貸金業者は18条書面を交付しないでもよいという私信を出していた。後の平成11年判決と正反対の内容である。このことからすれば,大蔵省が,みなし弁済の成立要件につき,平成11年判決や平成16年判決のように厳格には考えていなかったことは明らかである。

(4) 裁判所の見解
前述のとおり、平成2年判決に至るまで、'最高裁はみなし弁済の成否に関わる判断を行わなかった。そのなかで、下級審ではみなし弁済の成立要件を緩やかに解し、みなし弁済の成立を認めていた。
例えば、大阪高裁昭和62年9月18日判決(金蒔虫商事判例854号王o頁)は「支払いを強制したことを認めるに足る証拠はない」等としてみなし弁済の成立を認めている。また、秋田地裁昭和63年3月14日判決(判時1290号13!頁)は、17条書面について、「当該包括契約において特定しうる事項とは、包括契約締結時には論理上記載不能なもの(例えば右(ハ)の貸付けの金額及び貸付けの年月日)を除く、法一七条及び規則一三条が要求するすべての事項(本件の場合は別紙一七条書面(一)、1、4ないし7、(二)、三ないし7の事項)を指すというべきである」として、論理上記載不能なものは記載しなくてよいと判示した。また、同判決は、リボルビング契約について複数書面をもって17条書面の要件を満たすことを認める通達の適用も認めている(昭和58年9月30日付大蔵省銀行局長通達第2の4(2)ハ「(イ)包括契約を締結したとき及び当該包括契約に基づく貸付けを行ったときには、そのいずれのときにも書面を交付しなければならない。(ロ)包括契約を締結したときに交付する書面には、法第十七条第一項に掲げる事項中、当該包括契約において特定しうる事項を記載しなければならない。(ハ)包括契約に基づく貸付けをしたときに交付する書面には、貸付けの金額、貸付けの年月日及び当該包括契約の契約番号を記載しなければならない。」)。
難波孝一判事の論文「貸金業法43条に関する判例の動向」(「裁判実務体系(13)」
(青林書院)4頂)においても、「法18条は債務者の充当計算をする手掛かりとなる受取証書の交付を義務付けた点に主眼があり、内容の厳格性まで要求するものではないといえるのではないだろうか。(略)右受取証書及び予め債務者に交付されている契約書面等との照合によって債務者において充当計算ができるような場合には、法43条の適用を認めてもよいように思われる。」とされているとおりである。

                 −15−



(5)簡裁判事の見解
貸金請求事件に多く携わっている簡易裁判所においても、みなし弁済の成立要件をゆるやかに解してみなし弁済の成立を認める立揚をとっていたものと認められる。下表のとおり、貸金業法施行から約2年を経過した時点における、みなし弁済に関する簡裁判事の見解を記載した「貸金業関係事件執務資料」(最高裁判所事務総局編昭和60年9"月25日初版)において、18条書面の弁済額の充当に関する記載に関し17条書面と照らし合わせれば充当関係を把握できるとして、18条書面の要件を満たすこと等が認められていたのである。

貸金業関係事件執務資料(89頁)

「[10]貸金業者が債務者から弁済を受け、受取証書を交付したが、法=-//条一項四号の「利息、賠償金、又は元本への充当額」についての記載が実体に合っていない場合、特に借換えがあり旧債務の超過利息分を新債務の元本として、その後の充当計算をしている揚合などに、法一人条の書面を交付したとして法四三条一項の適用を認めるべきか。(58・高松)協議の結果次の二説に分かれたが、第二説が多数であった。(中略)
〔第二説}法一八条は、従来貸金業者の中には領収書さえも発行しない者がいた実情に鑑み、法定の受取証書の交付を義務付け、これを交付した者に対し法四三条一項の適用を認めたものであり、同条の主眼は債務者に充当計算の手掛かりを与えることにあると考えられる。債務者としては、正確な充当関係はあらかじめ交付を受けている契約書面等の記載を合わせて把握できれば足りるのであり、法一八条の受取証書は、必ずしも正確な充当関係を反映していない場合でも有効である。法一八条書面の交付があったとみて、法四三条一項の適用を肯定すべきである。


貸金業関係事件執務資料(90頁)

「〔11〕口座払込みの方法により六Q支払がなされたが、そのう
ち第三回目だけ法一八条書面を交付しなかった。第四回目以降について法四三条一項を適用してよいか。(59・東京)
協議の結果
法四三条一項を適用するか否かは、弁済ごとに個別に判断することとなるから、第三回目について適用要件が欠けていても、第四回目以降要件が満たされていれば適用すべきであるとされた。(以下略)」

(6)マスコミの見解
貸金業法施行当時の日本経済新聞には、下表のような記事が掲載されている。
しかし、貸金業法17条及び18条の記載事項の点を問題視して、みなし弁済が成立しない可能性があることには全く触れられていない。つまり、貸金業法制定当時、当時の世論を代表する媒体の._..っである日本経済新聞でさえも、みなし弁済の成否について、その要件である書面交付にっいて、厳格に解釈しなければらないと

                 ―16―

の認識はなかったのである。

「サラ金規制法成立ヘー悪質業者は営業停止、サラ金禍防止には限界」

昭和58年4月27日付日本経済新聞

「問「サラ金規制二法案」に対しては「利息制限法のL(骨抜ぎ"を図るもの」
だとして日弁連などから反対論が出ているが、何が問題なのか。
答∫貸金業規制法案」は四三条で借り手が利息として任意に支払った金額は、利息制限法による制限を超えていても有効である」と定めている。利息制限法の適用除外を目指したものであり、法案の国会審議の際も最も議論をよんだ部分だ。日弁連などでは「任意に支払う」という意味が不明確で、利恩制限法が完全に"骨抜き"になったわけではないとしているが、法案成立後は利息制限法をたてに高金利を規制するのは難しくなりそうだ。」

社説「サラ金規制法の不備を早急に見直せ」

昭和58年5月1日付日本経済新聞

「新法体制による上限金利も、まず年五四・七五%から出発し、法施行後三年経過した時点で同四〇・○〇四%まで引き下げる、という手順をとるべきだった。新法によってこれまで年二〇%の利息制限法を超える支払金利の返還請求が、事実上できなくなるという、いわゆるグレーゾーンの問題も、出資法の上限金利を思い切って下げていくことによって無害化を図るのが現実的である。」


(7)結論
以上のとおり、上記のような合理的な資料に照らしても、貸金業法の制定時である昭和58年から平成2年判決が下されるまでの間、みなし弁済の成立要件につき厳格に解釈しなければならないとは認識されておらず、いずれの要件についても後の平成16年判決のような厳しい立場は全くとられていなかった。

平成2年1月22日最高裁判決以降平成16年2月20日最高裁判決まで

最高裁がみなし弁済について初めて判断を示したのが、任意性要件及び17条・18条書面要件についていわゆる緩和説を採用した平成2年判決である。

(1)平成2年判決の判示内容
ア 任意性要件について

平成2年判決は、みなし弁済における「任意」とは、債務者が利息の契約に基づく利息又は賠償額の予定に基づく賠償金の支払いに充当されることを認識した上、自己の自由な意思によって支払ったことをいい、支払金額が利息制限法の制限を超過していたことや、当該超過部分の契約が無効であることまでの認識は不要とし、任意性要件を緩やかに解した。

               −17−



イ 17条・18条書面について

また、平成2年判決は、17条・18条書面について、f債務者が貸金業者に対してした金銭の支払が法四三条一項...によって有効な利息...の弁済とみなされるには、契約書面及び受取証書の記載が法の趣旨に合致するものでなければならないことはいうまでもない、,.」と判示し、@契約年月日の記載が真実と異なる、A借り換えの揚合に記載すべき旧債務の金額が記載されていないとの主張につき、いずれも王7条書面の欠陥として取り上げずにみなし弁済を認めた。

同判決の判例評釈(ジュリ959号92頁)において、i当時最高裁調査官であった滝澤孝臣判事は、「契約書面及び受取証=書の記載事項が法一七条及び一八条の所定事項、更に大蔵省令の所定事項、銀行局長通達の所定事項の全てを網羅していること、また、その記載事項が事実と寸分違わず一致していることを要するというような杓子定規な解釈適用ではなく、事案に即した幅のある弾力的な解釈適用を肯認する趣旨に解される」と述べ、いわゆる緩和説を採用したものであることを認めている。平成2年判決がいうところの「法の趣旨」は、立法者の意図に遡って解すべきところ、前記の立法者の見解にみたとおり、立法者はみなし弁済が容易に成立するものと考えていたのであるから、「法の趣旨」を「事案に即した幅のある弾力的な解釈適用を肯認する趣旨」と捉えることは、立法者の意図に即した正確な理解であり、平成2年判決は、17条及び18条書面にかかる立法当時のヂ法の趣旨」に合致した判決であった。

(2) 下級審判決
平成2年判決の後の裁判例を見ると、みなし弁済の成否について見解が統一化されておらず、17条・18条書面要件について、わずかな記載漏れも許さないとする下級審の裁判例も存在する一方、書面要件の不備ないし欠陥によって債務者が不利益を被るか否かを実質的に判断し、結果として要件を満たす旨判断した判例、裁判例も下表のとおり複数存在していた。

ア 任意性要件について

平成18年1月13目最高裁判決が出るまで、平成2年判決だけを前提に判断されており、期限の利益喪失条項が含まれる金銭消費貸借契約に基づく制限超過利息の支払いについて任意性を否定するなどという裁判例はほとんどなかった。例えば、東京地裁平成9年2月21日判決(判タ953号280頁)は、f任意の支払とは、違法不当な行為により強制された支払ではないものをいうが、右解怠約款が設けられていても右の強制には当たらないと解すべきである。3と、明確に判示している。最近公表された滝澤孝臣判事の論稿(銀行法務21・659号4頁)においても、同最高裁平成2年1月22日判決以降の状況に関して、「平成2年判決が言い渡されてから現在まで多数の貸金業取引関孫訴訟が係属したなかで、かつ、貸金業取引のほとんどに期限の利益喪失約款が存在するのではないかと窺われるので、期限の利益喪失約款の下での利息ないし損害金の支払いの任意性といった法律問題は、みなし弁済規定の適否が争われる事案では、法令の適用として、裁判所で当然に問題となっていた事項であると解されるなかで、これまでに支払いの任意性が否定されるとの裁判例がなかった」旨述べられているところである(同13頁)。

イ 17条書面について

17条書面要件について明確な判断を示した裁判例を以下挙げる。下表のとおり、

                 −18−

基本契約書と個別交付書面の補完関係を肯定し、リボルビング方式の「返済期間及び返済回数」を不要とするなど、17条について柔軟な解釈をする裁判例が複数存在していた。

(ア)基本契約書と個別交付書面の補完関係を肯定した裁判例

釧路地裁平成8年5月14日判決(判タ928号215頁)

貸金業法17条書面の交付の点について、「貸金業法一七条は、同条所定の事項を書面を以て債務者に明らかにすることを目的とするもので、右事項を一通の書面を以て交付すること、あるいは事前に決定され1書面を以て明らかにされている事項まであらためて、契約締結時に交付する書面に記載することまでも要求していると解すべき根拠はない。」として複数書面による17条書面の交付を認めた。

札幌地裁平成B年7月17判決(金融・商事判例1142・号31頁)

17条について、契約締結後の一か月後に一括返済する旨の約定でありながら、実際には一か月単位の利息の支払いにより弁済期が順延され、また借用証書の実質年利と各支払期日前に送付された講求書の実質年利の記載がわずかに異なっている場合であっても、個別貸付書面と同時に交付された基本契約書の当該記載を併せ見ることによって、延長された各回の返済期目は明らかで、なおかつ、その返済金額(冗本と延長期間に対応する利息)についても上記のとおり容易に計算可能と言えるのであるから...,17条書面の要件として欠けるところはないとした。

大阪地裁平成15年9月30日判決(判タ1146号283頁)

「包括契約を締結してこれに定めた条件により個々の貸付けを行う契約においては、包括契約を締結する際に、貸金業法17条1項所定の事項中当該包括契約で特定しうる事項を記載した基礎となる書面を交付するとともに、個々の貸付けを行う際に、貸付けの金額、年月日及び包括契約の契約番号を記載した書面を交付し、これらの書面の記載を合わせて上記のような記載がなされており、かつ、基礎となる書面に記載のない貸金業法i7条噸所定の事項が他の書面によって補完されていることが明確である場合には、貸金業法の上記趣旨が損なわれるとはいえない」とし、複数書面を総合することによって17条書面の交付があったものと認めることができる旨判示した。

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